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認定NPO法人カタリバ (認定特定非営利活動法人カタリバ)

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vol.001

すべての10代のために。
不確実性の時代だからこそ
「あるべき未来」を
問い直す仲間を募りたい

2001年の設立以来、子どもたちと向き合い、寄り添い、そして伴走を続けてきたカタリバ。キャリア学習プログラムの出張授業、子どもたちへの居場所の提供、不登校支援、経済的事情を抱える家庭への支援、探究学習やルールメイキングなどの学習プログラム開発、被災地の子ども支援、外国ルーツの高校生支援など、時代の変化とともにさまざまな事業を展開し続けてきた。そして、20年以上の月日が流れた今、カタリバは新たなフェーズへ進み始めている。今回は、常務理事・鶴賀康久と事務局長の渡邊洸に、カタリバの現在地、そしてこれからに必要なピースを訊いた。

  • 鶴賀 康久YASUHISA TSURUGA

    NPOカタリバ 常務理事

    神奈川県鎌倉市出身。2008年、創業期のカタリバに入職。当時から「NPO法人の存在意義」が関心テーマ。キャリア学習プログラム「カタリ場」の運営に従事しながら、組織基盤の整備に努める。東日本大震災を機に、東北へ移り住み、津波の被害が特に大きかった宮城県女川町、岩手県大槌町にて、放課後学校「コラボ・スクール」の「女川向学館」「大槌臨学舎」立ち上げを推進。2016年より東京に戻り、事務局長へ就任。2017年8月に常務理事に。2024年4月より、常務理事専任。

  • 渡邊 洸KO WATANABE

    NPOカタリバ 事務局長

    1983年生まれ。岩手県北上市出身。北海道大学公共政策大学院修了。 地域資源を活用したまちづくりについて学んだ後、地方自治体の行政改革、業務改善を支援。以前より地元へ戻ることを考えていたが、東日本大震災からの復興を支援することが先決と考え、2013年2月よりカタリバへ。女川向学館と大槌臨学舎、マイプロジェクト東北事務局の責任者を経て、現在はユースセンタードメインとインキュベーションドメインのディレクターを務める。2024年4月に事務局長就任。

23年で約15の教育事業、
組織は150人を超える規模に

創業から20年以上を経た、カタリバの現在地について教えてください。

鶴賀:

カタリバの現在地についてお話する前に、まずはじめに社会の変化からお伝えさせてください。

変わったというべきか、これまで見えていなかったものが見えてきたというべきか微妙なところですが、子どもたちの置かれている環境はこの20年間で大きく様変わりし多様化してきました。

近年では子どもの貧困についてマスメディアが取り上げることは当たり前となりました。虐待のニュースも増えています。さらには、不登校、ヤングケアラー、外国ルーツ、多様な課題が世間でも顕在化され始めています。

カタリバは2001年に創業しており、高校へのキャリア教育支援というシングルイシューに対する取り組みから始まりましたが、そうした社会の変化とともに浮かび上がってきた課題に対して活動を行ってきた結果、約15のマルチイシューに対する教育事業を展開する団体となりました。

そうした子どもたちの置かれている環境の変化に対応しながら組織としても150人(パートナーも含めると300人)を超える規模まで拡大してきたわけですが、日本全国の子どもたちに支援を届けるということをゴールに考えるとまだまだ圧倒的にリーチが足りません。

一方で、我々以外の支援の担い手に目線を向けると、NPO法人の数としては、一番多い時は5万以上の団体があったのですが2018年頃から減少傾向にあり、特に都市部と比べ地方のNPO数は少ないです。そうした中、同じような志を持つ団体や仲間が協働していくことなどで支援の担い手が増え、支援も拡大していくという未来を描きながら、カタリバが他団体を伴走支援するインキュベーション事業にも取り組み始めています。

渡邊:

私がカタリバに入ったのは2013年だったのですが、その当時は「とにかく東日本大震災で被災した子どもたちを支援したい」という想いを持った人が多く集まってきていました。メンバーの規模も30人ほどだったかと思います。

カタリバも被災地で子ども支援の現場を構えながら、被災した子どもたちに対してできることを職員みんなで朝から晩まで議論しながら考えていました。そこから10年という月日をかけて、戦略的・偶発的にいろいろな事業テーマに広がっていって今のカタリバになりました。

現在は、「社会をいい方向に変えていきたい」「同じ想いを持った人たちが集まる場所で働きたい」という人が集まってきてくれており、そういった仲間が150人以上集まるカタリバであれば、社会を動かしていくことができるのではないかと考えています。

幅の広さ、人の多さもあいまって、組織の中の顔ぶれも多彩になってきたと思います。鶴賀が言うように、まだまだできない部分もありますが、「本当に社会を変えていけるような仲間が集まっている」と言っても決して大げさではないような組織に、10年の月日を経て至ったというか、進化してきていると実感します。

コロナ禍、カタリバのアイデンティティ崩壊の危機を乗り越えて

カタリバでのキャリアを振り返って、
ご自身の価値観がアップデートされた出来事は?

鶴賀:

たくさんあるので選ぶのが難しいのですが、その中でもやはりコロナ禍は大きなターニングポイントだったと思います。

カタリバという団体名には「語る場」という意味が込められていて、実際に中高生や学校の先生、自治体の職員の方たちと会って、対話を重ねてきた歴史があります。

それがコロナ禍以降「直接会って行う対話」ができなくなってしまった。カタリバのメンバーだけでなく、支援先の子どもたちや学校の先生、協働している自治体の関係者、パートナー団体の方々、サポーターのみなさんたちも含めて「今後カタリバはどうなってしまうんだろう」という不安が頭をよぎったと思います。

一年に一度、全拠点のメンバーが一同に介する全社会議を実施しているのですが、コロナ禍においてはその全社会議もやむなくオンライン開催、そこでメンバーたちと話した時にも、多くのメンバーが迷いを感じ始めている雰囲気がただよっていました。

具体的にはどのように変えていったのでしょうか?

鶴賀:

そのような状況下において、我々が何をしたか。

「語る場」をとにかく意識的に設けるようにして「対話を止めない」ということをひたすらにやりきったんですよね。危機的状況にあって、初心に立ち返ったということになるのかもしれません。

悩んでいるメンバーと一緒に考える。プログラムの進め方、子どもたちとの接し方。わからない人同士で話す。Zoomで顔を合わせるのも昼間に限らず、業務時間外に飲み会をやってみたり、他の企業の話も聞いてみた方が、となったらカタリバの外の人と話しに行ってみる。理事や他団体や企業の経営層の方々と話す機会もありました。

「コロナ禍、一斉休校で子どもたちの学びが止まってしまうかもしれない」という危機感もありました。「それならオンラインの学びの場をつくればいい」誰も正解がわからない中での試行錯誤でしたが、そうして生まれた新規事業もありました。

「カタリバが“語る場”でなくなるかもしれない」という不安もありましたし、当時を振り返ると正直必死だったと思うのですが、そのような中「カタリバで働きたい」と採用面接に来てくれる人も多くいました。「大変な状況の中、即座にオンラインの支援を展開されていましたよね」と声をかけてくれる人も。そのような声にとてもエネルギーをもらっていたなということが思い出されます。

渡邊さんはいかがでしょうか?

渡邊:

大きく2つあるのですが、1つ目はカタリバに入った直後ですね。

前職時代も課題解決のための方法をとことん考え抜く・議論し尽くすということをやっていましたが、カタリバも「納得するまできちんと話す」「わからないならわかるまで議題にし続けていい」という組織風土で。

代表の今村や鶴賀といった経営陣はもちろん、職員も業務委託も学生もインターンも関係なく、同じように課題に本気で向き合う姿を見て、カタリバでも前職と同様に課題解決に真っすぐに取り組めるし、何よりも、自分の想いを持って仕事に取り組めると感じたことが印象的でした。

2つ目は、鶴賀から東北事業の拠点責任者を引き継いだ時です。

まず信頼して任せてもらったことがとても嬉しかったのですが、同時に「成果を出すこと」「持続可能な形で事業を運営していくこと」など、責任範囲も広がり視座も上がったことで、見える風景が変わったというか一段階フェーズが変わったタイミングだったと思います。これまで積み重ねてきたものに私なりの熱量を吹き込みながら成果を出していくことにワクワクを感じ、そこから担当領域も広がっていきました。

カタリバに必要なピース=「協働」と「意見の対立」

これからのカタリバに必要なのはどのようなピースでしょうか?

渡邊:

とても難しいですね。カタリバはまだまだ未完成ですが、足りないピースを埋めるためにみんなで頑張っているフェーズでもあって。ひとつ、巻き込みというか、「協働」に向けた動きが出てきているということが言えます。

創業から20年以上が経ち、仲間が増え、カタリバとしてやれることが増えてきましたし、子ども支援の現場での知見も相当たまってきました。

そのナレッジをシェアすることで、子ども支援を行っている他の団体や方々、自治体や国、色々な人を巻き込んで、子どもたちを取り巻く課題を解決し、ひいては日本の教育をよりよくしていけるのではないか、という議論が、机上の空論ではなく実現可能な世界の話として、「そのためにどうすればいいか?」を職員同士が話し合うようになってきています。

カタリバのミッションにある「意欲と創造性をすべての10代へ」への道筋が、ぼんやりしたものから実線になっているような感覚があり、そのような議論が団体内で行われている状態はとても良いと思います。

鶴賀:

「協働」のピースを埋めるにあたって、多様な方々とビジョンを共有する難しさも感じます。より多くの人々を巻き込んでいくことの難しさと言いますか。

たとえばカタリバでは、自治体と連携しながら、子どもたちのための放課後の居場所を運営していますが、日々学校の先生、保護者、行政職員、周辺地域のNPOなど多様なステークホルダーと連携を取り合っています。

一人の子どもを支援することを例に考えても、学校と放課後の居場所での子どもの様子が違う場合、その子どもへの必要な支援について、学校の先生と職員の間で擦り合わせが必要になります。

関係者が多くなればなるほど、物事を見据える視座が多様になってきます。「子どもがどのような成長を遂げることを目標にするか」「子どもたちが集まる居場所にどのような価値が生まれるとよいか」「それによって目指す社会の変化は」など、描くビジョンのキャンバスが広がれば、さらに共有の難易度は上がります。

カタリバ外の方々との協働以外にも、業務委託やパートナーという形で多様な人材を組織の中にお迎えして行う協働のスタイルも取っていますが、カタリバ内外に限らず、協働する仲間を増やしていく時に大切なのは、「カタリバがこうありたい」ではなく「社会がどうあるべきか」「そのために私たちはどうあるべきか」というビジョンを共有することだと思っており、心がけていることでもあります。そうした試行錯誤の甲斐もあってか、さまざまな形で参画してくださる方が増えてきつつあります。

ビジョンが共有できていたら、意見の対立はウェルカムです。違う人間なのだから、考えや価値観が違って当たり前ですし、どんどん意見を出せばいい。最初はズレがあるからこそ対話する意味があるし、だからこそ信頼関係も生まれる。

一緒に、つくりたい未来から考えよう

一緒に働きたい人物像について教えてください。

鶴賀:

自分なりにテーマを持っている人ですね。社会問題に関心を持っている人は増えてきたし、「なんとかしたい」という気持ちを持っている人も増えてきました。

より具体的に「自分がどういう社会課題を解決していきたいか」「どういうふうに社会と向き合っていきたいか」「どういう市民でありたいか」という思いをぶつけていただいても構いません。

私たちの事業に正解はありません。「こうやったらうまくいく」といった勝利の方程式もない。大海原を進む際に、コンパスになるのが「自分なりのビジョンや信念、倫理観」=「テーマ」です。

もしテーマが定まっていないのであれば、自分が抱いた違和感を語ってほしい。「こういうのっておかしいと思う」「もっとこうなっていくべきだと思う」といった意見で構いません。その意見が芽吹き、最終的には自分自身のテーマになっていくはずなので。

渡邊:

カタリバのいいところは“すべての10代”にフォーカスしている点だと思います。対象が限定されていないことが、団体としての多様性や寛容さにつながっている気がしています。

「いろいろな子どもがいるよね」というスタンスだから、専門家じゃなくても入りやすいし、議論ができる。最終的には社会を動かしていくことだってできるわけです。むしろ、私は物事の本質を追求するためには、“素人性”も大事だと思っています。

「社会課題への意識はあるけど、いろいろな理由で一度は別の道に進んだ。でもやっぱりそこをやっていきたいんだと思い直した。」という方も受け入れられる団体なので、ぜひカタリバに来て自分のやりたいことにチャレンジしていただきたいですね。

もし求めるものがあるとしたら“やり切る力”です。カタリバの強みは「成果が出るまでやり切ること」だと思っているので、本気で課題に向き合いたいという方に来ていただきたいと思います。

このタイミングでのカタリバへの入職にはどのようなやりがいや魅力がありますか?

渡邊:

設立から20年以上が経って事業も増え、カタリバに入って取り組める領域は確実に増えてきています。

NPOの役割は政治システムの中で動く行政も、経済システムの中で動く民間企業もリーチしづらい領域に自主的にアプローチしていくこと。「自分が関心のある領域の課題解決に取り組みたい」もしくは「そういう人を自分のスキルや経験を活かして応援したい」という思いを実現できる場所なので、思い切って飛び込んでほしいです。

カタリバでは「それは社会に必要なことなのに、なんで今できていないんだっけ?」というような話にもみんなが本気で付き合ってくれますから。役職やポジション関係なく本質についてとことん考えることができます。

鶴賀:

本気で付き合ってくれる仲間の存在は、私の立場からしてもありがたいですね。

世の中に何か違和感を覚えて「もっとこうした方がいいんじゃない?」と思っても、そこに本気で向き合い語り合える仲間は、探してもなかなか出会えないのではないかと思う中で、カタリバにはそういった仲間が集っているなと。

メンバーには「これは社会の課題だ」と思うことがあれば話してほしいし、何ならどんどん実践してほしい。事業の検討やトライアルのスピードが早い組織だと思いますし、実践を振り返る際にもフィードバックし一緒に考えてくれる仲間がいるので。

カタリバはまだ発展途上。組織が大きくなっていく過程でポジションは生まれていくし、カタリバを経てさまざまな環境へ飛び込んだ卒業生もいる。さまざまなキャリアモデルに出会えるのも魅力かもしれません。

今後入職する方とどのような未来を描いていきたいですか?

渡邊:

未来はカタリバの職員だけで描いていくものではなく、同じ領域にいる人たちとともに考えていこうというのが我々のスタンスだと思っているので、カタリバ内だけで「こういう未来をつくりたい」ということはあまり考えすぎないようにしています。

将来的にカタリバに所属し続けてもいいし、外に出るという選択をしてもいい。カタリバとしては社会に変化をもたらす人を増やしていく母体になりたいですし、そのためにはカタリバに所属し続けることにだけにこだわらず、どんどん好きなことに挑戦してほしいと思います。

鶴賀:

私たちが大切にしている言葉のひとつが「つくりたい未来から考えよう」です。

先の見えない時代なので、「きっとこういう未来が待っています」と断言するのは難しいじゃないですか。だから、一緒に「どんな未来があるべきか」を考えていきたい。

そして、社会の変化を受けて、あるべき未来像も問い直していくことが私たちにとって大事なことです。「社会を変える」というよりも、対話的に問い直していきたいと思っています。多様化する環境とともに、解決していくべき社会課題は増えていくはずですから。

どんな未来になっていくとしても「これが社会の課題なんだ」と旗を立てられる人は必要です。課題の大小は関係ない。自分なりに「この問題を解決したいと思っている」と手を挙げる人がカタリバからたくさん出てきてくれたら、うれしいですね。

(おわり)

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