PressRelease/校則見直し、先生の9割以上が「生徒の意見をきくことで学校をより良くできる」と回答
認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都杉並区、代表理事:今村久美、以下 カタリバ)は、生徒主体の校則見直しを全国へ広げる「みんなのルールメイキング」において、2021年度・2022年度に渡り調査を実施。ルールメイキングが生徒のみならず、先生にもポジティブな変化をもたらす可能性があることが分かりました。
<社会的背景>
2019年頃から生徒の人権を侵害する恐れのある「ブラック校則」の問題が注目され、2021年6月に文部科学省は全国の教育委員会へ校則を見直すよう通達。2022年12月には生徒指導の手引書「生徒指導提要」が12年ぶりに改定され、校則に生徒・保護者の意見を取り入れることや学校HPでの校則公開等が記されました。2023年、生徒指導提要改定後はじめての年度を迎え、4月にはこども家庭庁が設立されます。今後益々子どもが意見を伝える機会が重要視されることから、意見をどのように反映していくか模索が続けられています。
この調査から分かること
校則を題材に生徒・先生が対話をするきっかけを通じて、生徒主体の学校づくりを目指す「ルールメイキング」。ルールメイキングに取り組んだ学校の生徒・先生を対象に、質問紙・インタビュー調査を実施し、次のことが分かりました。
1. 「生徒の意見を聴くことで、学校をより良くすることができる」とルールメイキングに関わった先生の約97%が回答
2. 「教員たちは、互いの意見を遠慮なくぶつけあって話し合える」とルールメイキングに関わった先生の約89%が回答
3.「自分の意見には価値があるとおもう」とルールメイキングに参加した生徒の約64%が回答
4. 「社会をよりよくするために、社会問題の解決に関与したい」とルールメイキングに参加した生徒の約77%が回答
「生徒の意見を聴くことで、学校をより良くすることができる」とルールメイキングに関わった先生の約97%が回答
ルールメイキングに2ヵ年以上継続して取り組んだ学校への調査を実施。ルールメイキングの活動に1回以上参加した先生の97.2%が「生徒の意見を聴くことで、学校をより良くすることができる」と回答する結果となりました。(*3)
▼先生へのインタビュー調査から
・ 夏服のポロシャツ導入は、先生側から提案が挙がりましたが、先生達の方から生徒に意見を聞きたいとなりました。前は生徒の意見を聞くような雰囲気ではなかったので学校の生徒指導の在り方が変わってきているなと思いました。
・ 体育祭の委員会の生徒が運営して、競技内容も生徒会中心に意見を集めて、教員に提出して、その競技をやる形で実施しました。今までだったらそんなことありえなかったです。
「教員たちは、互いの意見を遠慮なくぶつけあって話し合える」とルールメイキングに関わった先生の約89%が回答
ルールメイキングに2ヵ年以上継続して取り組んだ学校への調査を実施。ルールメイキングの活動に1回以上参加した先生の89.3%が「教員たちは、互いの意見を遠慮なくぶつけあって話し合える」と回答する結果となりました。(*3)
▼先生へのインタビュー調査結果
・最近ある先生が「(教職員間のルールについて)こういうことも見直していかなくちゃいけないんじゃない?」と言ってくれたんですよ。ルールメイキング委員会の子たちも一生懸命頑張っているので、と。
・会議のやり方が変わりましたね。会議ではなく報告会のような内容でしたが、対話的に自分の意見を伝え合うようになりました。方法論的にはご存知だったと思いますが「こんな風にやっていいんだ」と勇気が出たんじゃないかと勝手に思っています。
「自分の意見には価値があると思う」とルールメイキングに関わった生徒の約64%が回答
ルールメイキング活動を中心的に進めた生徒と活動へのかかわりが薄い生徒との比較調査を実施。中心的にルールメイキングを進めた生徒の64.3%が「自分の意見には価値があると思う」と回答し、それ以外の生徒と比べて24.6ポイント高い結果となりました。(*4)
▼生徒の自由記述結果
・前までは、生徒会でルールを決めてくれたけど、やっぱり、「自分たちで学校を作る」ことに対して僕の意見も出し合って解決をしたいと思いました。
・自分の意見だけでなく、たくさんの人からさまざまな視点からの意見をもらうことの大切さを知りました。自分とは異なる意見だとしてもただ反対するのではなく、理解した上で根拠をもとに自分の意見を言えるようになり、そのことによって自分の考えを再度見直したり整理できるようになりました。
「社会をよりよくするために、社会問題の解決に関与したい」とルールメイキングに関わった生徒の約77%が回答
ルールメイキング活動を中心的に進めた生徒と活動へのかかわりが薄い生徒との比較調査を実施。中心的にルールメイキングを進めた生徒の77.3%が「社会をよりよくするために、社会問題の解決に関与したい」と回答し、それ以外の生徒と比べて20ポイント高い結果となりました。(*4)
▼生徒の自由記述結果
・みんなで決めて、みんなで考えて、みんなで解決することによってより深くルールを理解できると思います。これからの未来もルールメイキングを使って解決して行きたいなと思いました。
・「ルールを変える」という社会の問題について知りました。自分達が大人になった時にも起こる問題への理解が深まり、今後生かせていけるような経験ができました。
【まとめ】校則が共通の話題となり、生徒・先生の対話を促進するきっかけに。結果、生徒主体の学校文化が醸成される
2021年度、2022年度に実施した調査では、ルールメイキングに関わった生徒は、他の生徒と比べ、意見表明や社会参加への意識が高い傾向がみられた他、先生も生徒の意見が学校を変えると感じ、さらに先生同士の対話の土壌が生まれたりなど、ポジティブな変化をもたらす可能性があることが分かりました。
ルールづくりに正解はないからこそ、生徒・先生がフラットな関係性で、本音を話す「対話の場」を、ルールメイキングでは大切にしています。「校則・ルール」をみんなで話し合うことからはじめ、学校行事や学校づくりに積極的に生徒が意見をするようになったという学校も少なくありません。
昨今、文部科学省・こども家庭庁では、こどもの意見表明の機会づくりや、意見をいかに政策に反映するかといったことが模索されていますが、今回の調査から「学校現場発でも変えられることがある」という、ひとつの可能性がみえてきたと考えられます。
みんなのルールメイキングでは、生徒主体の学校へと新しい文化をつくっていきたい先生や学校に、各学校の背景にあわせた相談の場、教員同士の勉強会、研修やファシリテーター派遣等を行っています。子ども達の意見が身近な社会である学校で反映され、社会を変えていけると効力感を得られる取り組みが、全国の学校でさらに広がることを、これからも支援していきます。
みんなのルールメイキングとは
校則を題材に生徒・先生・関係者が対話をしながら、立場や意見の違う人たちと納得解をつくるプロセスを体験することで、生徒主体の学校づくりを目指す取り組みです。2022年度経済産業省「未来の教室」実証事業に採択され、現在では全国200校以上をサポートしています。
<Webサイト・情報メディア>
https://rulemaking.jp/
<経済産業省「未来の教室」とは>
経済産業省は「『未来の教室』ビジョン(2019年6月)」を踏まえ、様々な個性の子ども達が、未来を創る当事者(チェンジ・メイカー)になるための学習環境づくりを目指し、1.学びの探究化・STEAM化、2.学びの自律化・個別最適化、3.新しい学習基盤づくりを柱に2018年度より実証事業に取り組んでいます。
「未来の教室」ってなに?(「未来の教室 ~learning innovation~」サイト)
https://www.learning-innovation.go.jp/about/
認定特定非営利活動法人カタリバとは
どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。
<団体概要>
設立 :2001年11月1日
代表 :代表理事 今村久美
本部所在地:東京都杉並区高円寺南3-66-3 高円寺コモンズ2F
事業内容 :高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(宮城県女川町・岩手県大槌町・福島県広野町)/災害緊急支援(全国)/地域に密着した教育支援(東京都文京区・島根県雲南市)/困窮世帯の子どもに対する支援(東京都足立区・全国)/外国ルーツの高校生支援(東京都)/不登校児童・生徒に対する支援(島根県雲南市・全国)/子どもの居場所立ち上げ支援(全国)
URL : https://www.katariba.or.jp/
問い合わせ
取材に関するお問い合わせは下記フォームにご入力ください。
https://www.katariba.or.jp/report/(担当:カタリバ広報 阿部)
調査概要
*1 文部科学省「校則の見直し等に関する取組事例について」(令和3年,6月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00004.htm
*2 文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」(令和4年,12月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
*3
調査名:ルールメイカー育成プロジェクト2022 研究調査
調査対象:ルールメイキングの実践を2か年以上継続して実施している7校
調査方法:質問紙調査/インタビュー調査
研究統括:古田 雄一(筑波大学)・古野香織/山本晃史(NPOカタリバ)
定量調査協力:小栗 優貴(愛知教育大学・非常勤講師)
定性調査協力:奥村 尚(独立研究者)・浜田未貴(NPO法人DAKKO)
調査期間:2022年12月5日~2023年1月25日
報告書:https://onl.bz/WEP6xFS
*4
調査名:「生徒の変化に関する調査研究」認定NPO法人カタリバみんなのルールメイキング調査研究報告書
調査対象:2021年度ルールメイキングプロジェクト先進事例校・実証事業校 全国13校
調査方法:質問紙調査、参与観察、インタビュー調査
調査実施者:研究統括 古田雄一、NPOカタリバ/データ取得・分析:研究コアチーム(10名)によって実施。
調査期間:2021年4月1日〜2022年3月31日
報告書:https://onl.la/wvGBEjx