「news23」でのヤングケアラーに関する報道につきまして
2022年1月25日(火)に放送されました報道TV番組「news23」の中で、1月15日に起きた埼玉県白岡市の15歳の少年がお亡くなりになった事件について「卒業アルバムに載っていたのは名前だけ・・・埼玉・白岡市中3死亡 “ヤングケアラー”の実態」という題の特集が組まれ、当団体職員のコメントが紹介されました。
限られた時間の中での報道だったということもありましたが、当団体といたしましては、暴行を受けお亡くなりになったと見られることと、ヤングケアラーであった背景を直接結びつけるのは難しいと考えております。本事件を、ヤングケアラーと結びつけて語ることから生じる誤解は、不本意にもご病気を抱えている、家庭の中でお世話をしなければならない家族がいる当事者の方々、そしてその家庭で暮らす子どもたちを、さらに苦しめ、助けを求める声をあげにくくすることにつながるのではないかと懸念しております。つきまして、報道内容について、当団体として考えていることをお伝えさせていただきます。
■「暴行(を受けて亡くなったと見られていること)」と「ヤングケアラー」は、切り離して考える別の課題
今回の報道の中では、少年が家族のお世話を行っていたことから、事件の背景にある一つの側面として考えられている「ヤングケアラー」に焦点を当てて報じられましたが、当団体といたしましては、今回の事件においては少年が複合的に課題を背負っていた可能性があり、必ずしも2つの課題は直結するものではないと考えております。
ヤングケアラーの家庭背景には、ひとり親や経済的困窮により、子どもがケアを負担せざるを得ない環境があるなど、ケアを取り巻く家庭全体の状況は多種多様であり、丁寧且つ多面的に捉える必要があります。
■当事者の子どもたちが「自分は支援を求めていい」と思える社会を
番組の中で、1月24日(月)に当団体が開催した、ヤングケアラー支援をテーマにしたセミナーの様子、また当団体職員のコメントが紹介されましたが、本セミナーは、ヤングケアラーの支援の輪を広げるために、私たちの活動を通して見えてきた当事者の子どもたちが直面している課題や、必要とされている支援がどのようなものなのかを共有することで、支援の輪を広げるために開催したものでした。今回の事件報道と関連して開催したものではございません。
厚生労働省によると、ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に担っている子ども」とされていますが、支援の現場においてはその解釈はまだ定まっていません。中には、ケアがすべて不幸や問題ばかりにつながるのではなく、家族というコミュニティの支え合いに誇りをもったり、学びや前向きな進路選択につながっている子どももいます。
「家庭のケアを担う子ども」を、ケアの負担を強いられている子どもとして、否定的な視点で安易に捉えるのではなく、ヤングケアラーの家庭状況やケアの背景、頻度、負担感等を踏まえ、ケアを取り巻く家庭全体の状況を多面的に捉えていく必要があると感じます。
情報発信によってヤングケアラーの認知度が高まることで、子どもたち自身や周囲が課題に気付きやすくなることは、支援の一助になると考えておりますが、大切なのは、家族をケアする当事者の子どもたちが、自身が「誰かに助けを求めていい立場だ」と自覚できるようにサポートする輪を広げること。そして、気づいた時にそれを恥じたり、親が責任を問われるのではないかと思ってしまうようなことが起きないようにすることだと考えております。
当団体における支援につきましても、はっきりした正解のない試行錯誤の日々ですが、家庭、学校、専門家、行政、民間それぞれ連携し合ながら、引き続き「ケアを要する家族がいる家庭で生まれ育っても、 未来に希望と豊かな選択肢を持ち、自分自身の可能性を拓いていける。」という世界を目指してまいります。
最後になりましたが、埼玉県白岡市において、未来ある大切な命を落としてしまったお子さんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。