認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都杉並区、代表理事:今村久美、以下カタリバ)は、「先生と合わない」「病気を抱えている」「発達特性がある」「コロナ禍で自主休校せざるをえない」など、さまざまな理由で学校に行くことができない児童生徒、またその保護者向けのオンライン支援プログラムを本格始動しましたのでお知らせします。
学校に行けない「長期欠席者」の児童生徒は年々増加し28万人超
2020年度に「不登校」とみなされた小中学生は、前年度より8.2%増の19万6127人で、過去最多だったことが文部科学省の問題行動・不登校調査(※)で示されました。
さらに、上記に加えて「病気」「経済的理由」「新型コロナウイルスの感染回避」などで、年間30日以上学校に行けていない長期欠席者も含めると、実はその数は28万7,747人にも上ります。
一方で、不登校の子どもたちをサポートする「不登校特例校」や「教育支援センター」は、設置が自治体の努力義務となっていますが、実際に設置されている自治体は全国の約6割にとどまり、不登校の児童生徒数に対して公的支援が足りていないのが現状です。
※令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
一人ひとりに合わせた学びを届ける不登校支援DXプログラムが始動
カタリバでは、2015年から、学校生活や登校することに困難を抱えている小中高生を対象に、家庭訪問や居場所の提供、学習支援などのサポートを行ってきましたが、2020年以降のコロナ禍においては、さらにさまざまな事情を抱える家庭から声が寄せられるようになりました。
「病気の家族がいて、コロナ感染回避をする必要があり自主休校せざるをえない」(北海道 小学6年生の保護者)
「度重なる休校や環境の変化のストレスから学校に行けず、医療機関にかかったところ、HSC(Highly Sensitive Child)傾向があると知った。不登校が2年続いている」(香川県 小学4年生の保護者)
また「学校生活が合わず不登校になったが、知能検査を受けたところIQ150以上、そしてギフテッドかもしれないと助言を受けた」(大阪府 小学2年生の保護者)
という方もおり、子どもたちの状況は多様化し、複雑になってきていると感じます。
どんな子どもにも、その子に合った適切な学びに当たり前につながれる世界をつくりたい。そのような想いから、オンラインで一人ひとりに合わせた学びの形を提案する不登校支援プログラムをスタートしました。
【1】学校に行けていない子どものためのオンラインの学び場「room-K」
学校に行けていない子どものためのオンラインの学び場「room-K」は、現役小学校教員や特別支援学校教員などの専門家とともに開発した独自の不登校支援プログラムです。
臨床心理士や社会福祉士などのバックグラウンドを持つコーディネーターが、保護者・子どもと面談し、個別支援計画を作成。その計画をもとに、専属の支援計画コーディネーター・キッズメンターがオンラインで定期的な面談を行い、子どもと保護者に寄り添いサポートします。
▶子ども一人ひとりの発達や特性に合わせた「オリジナルの時間割」を作成
子どもたちは、週に1回の「作戦会議」と呼ばれるメンターとのミーティングを繰り返しながら、支援計画コーディネーターとの面談を経てオリジナルの時間割を作成します。オリジナルの時間割をもとに、個別に最適化された学びの時間を過ごします。
▶AI型教材、探究型プログラミング、算数講座など、オンラインの学習支援サービスと連携
本プログラムでは、事業理念に賛同いただいた民間企業との協働により、AI(人工知能)型教材や探究型プログラミング、算数講座などのデジタル教材やオンライン講座による学びの機会も提供しています。その子に合った教材を組み合わせながら、得意を最大限まで伸ばせるような学習計画を立てています。
※2021年12月13日現在、無償提供、またはプログラム開発パートナーという形で連携しています
<room-Kに参加した子どもの変化(保護者からの声)>
●今までは、夜遅くまで起きてお昼前まで寝ていましたが、ちゃんと夜早く寝て、朝早く起きるようになったのが最大の変化です!
●この何年か、次の日に「予定」があることがなかったので嬉しい。本人も張り切って参加しています。
●外出するのはハードルが高いですが、自宅にいながら参加出来るのでハードルが下がります。
●子どもの興味があることを入り口に関心を広げようとしてくれているのが本当にありがたく、取り組みに対しての効果がでていると感じています。
●学校に行けていない中で、毎日room-Kに参加できることは本人のできるという自信に繋がっていると思います。
●メンターさんとの作戦会議があるから、こどもが目標を持って生活することができています。
【2】不登校の子どもを持つ保護者が悩みを相談できる2つの居場所
「発達特性があって学校に通うことが難しい」「自分らしい学習の方法やペースがつかみにくい」など、実際に不登校になるきっかけはさまざまで、その背景は単純ではありませんが、共通して言えることは、親がなんとかしなければと苦しい状況に追い込まれ、その負担が増してしまうということです。
不登校の悩みを持つ保護者は、一人でその悩みを抱え孤独を感じている人も少なくなく、そんな保護者の方に寄り添うための取り組みもスタートしました。
▶1対1で、我が子の不登校の悩みを相談できる「オンライン無料相談窓口」
不登校に悩む、小学生〜高校生までの子どもを持つ保護者を対象に、30分のオンライン面談を行っています。直接話すのが難しい場合、LINEのチャットでの相談も可能です。ご家族の想い・悩みを聞きながら、子どもにあった学びの方法や居場所を一緒に探します。
▶保護者同士がつながり、悩みや困りごとを話せる「オンライン保護者会」
不登校の子どもを持つ保護者の経験を聞きながら、保護者同士がつながりこれからのことを考える「オンラインおはなし会」を無料で開催しています。
<オンライン保護者会に参加した保護者の声>
●いろいろなお子さんを育てている保護者がたくさんいると知れて、「自分だけじゃない」と感じられました。今まで娘の居場所を見つけることが優先されていたたけれど、母親である自分の居場所がなかったのかもしれません。ここでなら自分の気持ちが話せる。自分の居場所になれるのかもしれない、と感じることができました。
●参加できてよかったです。不登校の子どもを持つお母さんのサポートが必要とすごく感じました。不登校の問題の根っこはお母さんの「元気」が大きい。こどもが不登校になって、育て方や自分を責めたこともありましたが、その分、教育の問題など見えなかったものもたくさん見えました。親の居場所が少なすぎることが問題だと感じます。このような場はとてもありがたいです。
●それぞれ立場が違うものの、困りごとや課題には共通点があります。みんな悩んでるんだと知るだけでも元気がもらえます。
▼プログラム詳細はこちら
https://futoko.katariba.online/
行政・学校・民間のリソースを共有。DXで不登校現場は変わる
「音やダンスで表現することが得意な子ども」「特定の分野に尋常じゃない集中力を発揮する子ども」「興味や関心が拡散しやすい子ども」学級にはさまざまな特性をもつ子どもが存在し、一斉授業スタイルは限界に来ているという指摘もある中で、皆同じことを一斉にやり、皆と同じことができることを評価してきたこれまでの教育に対する社会全体の価値観を変える時が来ているかもしれません。
現在は、家庭に対するホームスクーリングの支援をメインに行なっている本プログラムですが、将来的には日本全国の自治体、学校とオンラインの支援者がチームを組んで子どもたちの学びを支えるということも見据えて事業を展開していきたいと考えています。
官民の連携により「学校に行けなくなってから」ではなくもっと前の段階で、子どもの発達、特性に合った学びの機会を届け、不登校の未然防止にもつなげる。そのような世界を目指して、子どもたちにとって本当に必要な支援を提供していける体制を構築してまいります。
認定特定非営利活動法人カタリバとは
どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。
<団体概要>
設立 :2001年11月1日
代表 :代表理事 今村久美
本部所在地:東京都杉並区高円寺南3-66-3 高円寺コモンズ2F
事業内容 :高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(宮城県女川町・岩手県大槌町・福島県広野町・熊本県益城町)/災害緊急支援(西日本豪雨、令和元年東日本台風、熊本豪雨)/地域に密着した教育支援(東京都文京区・島根県雲南市・島根県益田市)/困窮世帯の子どもに対する支援(東京都足立区)
URL : https://www.katariba.or.jp/
問い合わせ
●取材に関するお問い合わせは下記フォームにご入力ください。
https://www.katariba.or.jp/report/ (担当:カタリバ広報 田中)
●プログラムに関するお問い合わせは下記迄ご連絡ください。
room-k@katariba.net (担当:カタリバオンライン不登校プログラム 白井)