「社会貢献に興味はあるけど、NPOで働くってどんな感じなんだろう…?」
「NPOで、今の自分のスキルは役に立つの?」
「学生時代にカタリバでボランティアはやったことあるけど、フルタイムで働く道もあるの?」
そのような方たちに向けて、第6回シゴト場@ONLINE「ビジネスの専門スキルを活かして、NPOを支える仕事」イベントを10/1(木)に開催しました。
オンラインでの開催となりましたが、転職活動中の社会人や大学生、教育関係者など、約70名の方が参加し、みなさんの関心の高さを感じました。そのイベントの様子をご紹介します。
子どもを支えるだけではない、
カタリバの仕事
はじめに、代表の今村久美からカタリバについての紹介がありました。
今村久美(以下、今村):地方から東京の大学に進学したとき、子どもの頃から教育機会に恵まれていた同級生たちとのギャップを感じました。この社会はものすごい分断があると感じ、カタリバを創業しました。
カタリバというと、子どもを支える仕事をするイメージを持つ人が多いかもしれません。けれど、現場以外でもさまざまな仕事があります。今日は、表にはあまり出ないけれどカタリバを支えている人たちの仕事内容ややりがいを伝えられたらと思います。
バックオフィスを安定させれば、
現場が挑戦できる
田中健次 経営管理本部マネージャー。2015年6月入職。38歳。カタリバでの呼び名は「たなけん」
田中健次(以下、田中):最初はカー用品会社に就職してオイルやタイヤの交換をしていました。ある日突然に配置転換されて経理を経験しました。その後は税理士事務所に転職して、そこでも経理や税務を担当していました。ただ、数百億円の取引も行うことがあり、正直激務でもありました。社外に目を向けていた時に、出会ったのがカタリバでした。
「バックオフィスからNPOを活性化させられれば、社会課題が解決できるのでは?」と思い、カタリバに転職を決めました。カタリバは当時から管理部門がある程度しっかりしてるNPOでした。自分が関わることで運営がさらに強くなるに違いないと実感できたことも転職理由の1つでした。
新しいことにどんどん挑戦していく組織なので、バックオフィスを安定させることで、フロント(現場)が挑戦できる。NPOの中でもカタリバが1番バックオフィスが強いよね、と言われる組織にしていきたいです。メンバーから「ありがとう」と言われるのも嬉しいし、こんなに報われる会社はないと思いますね。
スピード感ある採用で、
事業の成長を支える
坂東慶伍 人事採用担当。2020年3月入職。28歳。カタリバでの呼び名は「ばんちゃん」
坂東慶伍(以下、坂東):私は地方出身で、進路の選択肢が少ないことや、価値観が画一的であることに閉塞感を感じていました。そうした原体験から、大学では教育について学びました。社会人になってからは、旅行雑誌の広告営業や制作に関わったあと転職し、人材業界のスタートアップ企業で働いていました。
採用だけでなく入社後の伴走まで携わりたいと思い、人事の仕事を探していたときにたまたま見つけたのがカタリバでした。学生時代から知っていた団体でしたが、事業領域が大きく拡大していることに驚きました。
―現在、坂東は中途採用を担当している。コロナ禍もあった今年、直近の半年でさまざまなポジションの求人に対して約1000人からの応募があったという。
坂東:応募者に多様性があると感じています。私は人と出会うのが好きなので、それがやりがいです。また、企業時代と比べてスピード感がありますね。例えば熊本豪雨の支援では、被災地に子どもの居場所を3箇所つくるために、地元の方を急ピッチで採用。大変でしたがやりがいを感じました
あるべき未来の姿に
より迅速にたどり着けるから
李想烈 カタリバオンラインとキッカケプログラムで、技術・事業化設計等を担当。2020年4月入職。カタリバでの呼び名は「かーくん」
李想烈(以下、李):カタリバに参画する前は自分で起業したり、NPOでバックエンドを担ったり、社会的団体の立ち上げ支援に携わったりしてました。フリーランス歴が長いですね。
入職理由は、カタリバのメンバーとカルチャーが大好きだから。以前に代表の今村と個別で会話したり、ボランティアに参加したりしたことで職員の輝いている姿を見ていました。その頃から、何らかの形でカタリバに関わりたいと思っていましたが、まさかここまで全力でジョインする結果になるとはと、自分でも驚いています。
オンライン事業部を立ち上げる過程で、ITに詳しく自走して業務に携われる人材が募集されていたのですが、自分自身のスキルにちょうどマッチしていたため参画する流れになりました。
―オンライン事業部という新しい組織で、専門性が求められる難易度の高い業務もあるものの、その一つ一つに応えていくことが今の仕事の醍醐味だと言う李。その言葉からは、忙しそうだが充実していることが伝わってくる。
李:尊敬する仲間の存在が、高いモチベーションの源になっています。また、時代の最先端で、叶えたい未来をサービスに実装していく仕事であることも魅力です。一日頑張ることで、あるべき未来を1分でも早く子どもたちに届けられるのなら、頑張るしかない(笑)。カタリバは、オーナーシップを持ってさえいれば、やりたいことをどんどん前に進められる環境であると感じています。
他のNPOからの出向で参画。
研究成果を社会へ発信
藤原未怜 2020年6月に、NPO法人クロスフィールズからカタリバへ出向。カタリバオンライン事業部でリサーチなどを担当。28歳。
藤原未怜(以下、藤原):民間企業で、製薬・医療業界のデータ分析・業務改善に携わっていたのですが、2019年12月にクロスフィールズという、日本企業に所属する社員を新興国のNPOや社会的企業に派遣するプログラムを行うNPOに転職しました。
幼い時から国際協力への憧れがあり、フィリピンに留学したことがあるのですが、その経験を通して教育・人材育成に関わりたいと考えるようになりクロスフィールズに転職しました。さらに、子どもの教育の視点から国際協力を捉えてみたいという思いで、カタリバに出向しています
―経済的な困難を抱えた家庭に、PCとwifiの無償貸与をする「キッカケプログラム」に関わっている藤原。
藤原:カタリバの強みは、作りたい未来から仕事できること。どういう未来にしたいのか本気で仲間と話し合える文化があります。NPOならではのスピード感、カタリバならではの規模の大きさも感じています。今は「キッカケプログラム」を通じた支援の効果について、大学と協働した効果検証プロジェクトを担当していますが、研究結果を社会に発信することで、今後もっと広くサポートを届けていける可能性を感じています
NPOから企業へ戻れる?新卒で働ける?
気になるキャリアのこと
参加者から職員に、いくつかの質問が挙がりました。
参加者:大企業からNPOに入ってきて、違いはありますか?
採用チーム菊地(以下、菊地):企業とNPOの違いというより組織規模の違いだと思うのですが、例えば前職では契約書を結ぶ時には法務部に任せていましたが、私が入社当時のカタリバでは弁護士さんに電話しながら自分で担当することもありました。担当分野にとらわれず様々な経験ができたことは勉強になりました。
李:前職は大手企業でしたが、若手はなかなかやりたい仕事に取り組めなかったり、上の人の仕事をとっちゃいけない空気を感じたりしたこともありました。カタリバはそういった年功序列の考え方はなく、意欲のある人にはどんどん任せていく文化だと感じています。
参加者:地方に住みながらカタリバで働くことはできますか?
田中:コロナをきっかけに、リモートワークを強化しています。コーポレート部門では1週間の大半を在宅勤務としているメンバーもいたり、まだ実験的にですが、フルリモートで働いている地方在住の職員もいたりします。ニーズやスキルにもよりますね。
参加者:NPOで1度働いた後、ビジネスセクターに戻れますか?
今村:成長するために3年間ここで働いてみようという方もいますし、カタリバで働いたあとに民間企業に転職する職員もいます。従業員数を増やそうとしているベンチャー企業へと引き抜かれることもあり、嬉しいことなので笑顔で送り出しています。
参加者:中途採用が多いということでしたが、どうしても新卒でカタリバで働きたい人に求めることはなんでしょうか?
菊地:カタリバでは新卒採用はオープンにやっておらず、学生時代からインターンなどで関わりのあった学生を、毎年数人採用する程度です。これは組織としての課題でもありますが、答えのない課題に挑戦し続ける現場ではどうしても育成に手が回らないこともあり、即戦力として活躍していただける方の中途採用が中心です。
田中:私は30代で転職しましたが、社会人経験を積んでようやくNPOに入る覚悟を決められました。貢献できるものが手にある状態というのも大事だと感じています。
今村:カタリバでの仕事は、商品を何個売ればOKというものではなく、正解は自分で作り出すという環境です。ですから、考える力が求められます。ある程度仕事に自信がつき、全力でコミットできるタイミングというのが、NPOに入るいいタイミングかなと思います。
―イベントを終えて参加者からは、「どういう雰囲気の人が働いているのかわかって、参加してよかった」「組織のいい部分だけでなく、課題まで聞けたのは初めてだった」「ホームページを見て子どもと関わる仕事ばかりだというイメージだったが、裏でたくさんの方が組織を支えているとわかった。何かの形で関わっていきたい」というような感想が挙がりました。
NPOで働くことは、楽しい部分もあれば、オーナーシップが求められるハードな部分もあります。それでも今回登壇した職員に共通していたのは、自分のスキルを活かせる場所でやりがいを持って働いているということ。
「今すぐでなくても、ご縁のあるタイミングで一緒に働くことができたら」という代表今村の言葉にあるように、チャレンジしたいタイミングが来たら、門を叩いてみるのも選択の一つなのかもしれません。