2020年9月1日、東京書籍(株)が発行する教育情報誌「教室の窓」の巻頭言に、カタリバ代表理事の今村久美の寄稿記事『ポストコロナ時代を生きる子どもたちにどう寄り添うか』が掲載されました。子どもたちにとっても現場の先生たちにとっても苦しく不安なコロナ時代。安心安全な学びの場という役目を学校だけが担うのではなく、社会全体で役割分担しながら子どもたちに寄り添っていこう、という今村のメッセージが綴られています。「教室の窓」は、小学校・中学校の教科情報など、最新の教育情報をご紹介する教育情報誌です。学校関係者以外の皆さまも、是非お読みください。
▼以下、掲載記事より抜粋
私が学生時代に立ち上げた認定NPO法人力タリバは,これまでの約20年間,どんな環境に生まれ育った子どもたちも,未来を自分の手でつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指して活動してきました。今回の一斉休校の発令を受け,体校中の子どもたちの居場所をオンライン上に開設し,全国や世界各地のボランティアの方々が子どもたちに学びや遊びのコンテンツを届けてくれています。
この「居場所」では,不登校や病気などを理由に学校に通えていない子どもたちもフラットに参加でき,学校では自己表現がしづらかった子どもたちも利害関係なく話せるという,オンラインならではのよさも見えてきました。設備環境を理由にオンラインにアクセスできない家庭には,「奨学PC」を無償で貸与。使いこなすプロセスにオンラインで伴走するというサービスも始めています。
先日,利用者の保護者から,「子どもたちが青ざめて下校してくる」という話を聞きました。学校では三密を避けるため,おしゃべり禁止, 歌も口パク,マスクも常時着用で,わっと子どもたちが笑うと先生がやってきて注意を受けるのだそうです。子どもたちは滅入ってしまい,不登校気味になるのだと言います。その話を聞き,子どもたちもつらいが,不本意にもそのような対策を強いなければならない先生方もさぞ苦しく,葛藤の中で子どもたちと接しているのだろうと想像しました。
(中略)
このような状況の中,子どもたちにどう寄り添っていくかを考えることが今,求められています。
(中略)
ぜひ,これまで学校が担保し続けてきた,安心安全で,子どもが豊かに心を育てながら学んでいける場という役目を学校の外にもつくることを,既存の概念にとらわれず,柔軟に考えていっていただけたらと思います。その過程の中で,私たちNPOのような存在が,学校と地域をつなげる役割を果たしたり,オンライン学習のノウハウを提供したりするなど,お手伝いできることはたくさんあります。
今こそ,学校だけでなく,地域のあらゆるリソースが役割分担し, 各々の得意分野を活かしながら,子どもたちの育ちを支えていく。そんな協働の形を実現していきませんか。
東京書籍(株)「教室の窓」2020年9月号より