認定NPO法人カタリバは、西日本豪雨の被害を受け、2018年7月15日・16日の2日間、現地の子どもたちの状況や教育ニーズを把握するため、岡山県倉敷市真備町を訪問し、井原市のチーム夢源さん、矢掛町のYKGさんと共同で調査を行いました。
現地で見た子どもたちの様子をカタリバ職員の吉田愛美がリポートします。
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これまで、避難所などで見聞きした、子どもたちや保護者の声をご紹介してきました。
>>レポート1 https://www.katariba.or.jp/news/2018/07/17/11617/
>>レポート2 https://www.katariba.or.jp/news/2018/07/18/11623/
現地の様子を見てきて、カタリバがとらえた現地の子どもたちの課題は大きく以下のものになります。
・学習の遅れ
学校が休校し、避難先もバラバラ。子どもたちの情報が把握できておらず、このまま夏休みになることで、学習の空白ができてしまう。
・孤独な状況
家族が忙しく、友だちと避難先も分かれてしまっていることで、遊んだり、悩みをそっと打ち明け合える相手がおらず、心の中にため込んでしまう。また運動不足にもつながる。
・インターネットへの依存の懸念
心の不安を紛らわすために、スマートフォンを触る時間が増え、そのまま依存へと発展してしまう可能性がある。
東日本大震災や熊本地震でも、同じような課題がありました。
そして難しいのは、子どもたちに「何がほしいか?何か困っていることはあるか?」と質問しても、多くの子どもたちが「今、何が必要か分からない」としか答えが返ってこないこと。
これもまた、これまでの災害時に見られることです。
「自分は大丈夫」と思っていても、実際は知らず知らずのうちにそうではない状態に陥っていることがあります。アンケートやインタビューの声だけで、子どもたちの課題は見つけられるものではなく、変化を誰かが注視していくことが大切です。
けれど現状では、学校の先生も、保護者も、余裕がありません。
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避難所となっている学校の体育館。
自衛隊によるお風呂が設置され、様々な物資が集積しています。
夕方になると作業を終えた人々が続々と戻ってきました。
大人たちに紛れて、中高生の子どもたちの姿も見えます。その数は、避難所にいる子どもたちよりも少し多いかもしれません。
子どもたちの足元は泥で汚れ、疲労の色も見えました。
「元のように、学習環境があればいいとは思いますけれどもね・・・」
中学生の子を持つお母さんはそう言ったきり、口をつぐみました。
中学生が履いているジャージは学校のものではなく、援助物資として譲り受けたものだと言います。「今は親戚の家に住んでいますが、あまり迷惑はかけられないですね」
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真備の町中は、道沿いに高く積まれた家財と、茶色く汚れた家屋を除いては、全面が泥と砂で覆われていました。あたりは、熱気とともに生臭いにおいで包まれており、30秒立っているだけでも、少し気分が悪くなってくるほどです。
真備町に教え子がいるという方が、変わり果てた町の様子を見てつぶやきました。
「心の準備をしていなかった。泣きそうだ・・・」
間もなくみなし仮設の手配が進み、いずれは仮設住宅もできるということを耳にしました。被災を期に、町外へ出て生活することを選択する家族もいるだろう、と推測する方もいます。
まずは生活を立て直す。被災した多くの方々が、生活の再建に向けて動き始めています。その時、子どもたちはどうするか。学校は、勉強は、心のケアは、居場所は・・・。多くの大人たちはそれらを気に留めながらも、その余裕がない状態であると感じます。
しかし同時に、今回の災害が子どもたちに及ぼす影響の予兆を、私たちは感じずにはいられませんでした。カタリバができることは何か。地域の方々とも協力をしながら、その答えを探っていきたいと思います。
※7月16日時点の情報です。現地の状況は日々変化しています。
【西日本豪雨】緊急支援「西日本豪雨子どもサポート募金」へのご寄付をお願いします
実態調査を経て、カタリバは現地での活動をスタートしました。
東日本大震災や熊本地震の経験を土台に、現地の状況に合わせた形を模索し、1人でも多くの子どもたちのために、できることから取り組んでいきます。
皆さまのご支援をよろしくお願いします。
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