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【自己肯定感】低い理由と対策

子ども支援コラム

■目次
1. 自己肯定感とは
2. 自己肯定感が高い状態とは
3. 自己肯定感の類義語〜自尊感情〜
4. 自己肯定感が低い状態とは
5. 自己肯定感が低い子どもの行動
6. 自己肯定感が低い日本の子ども達
7. 子どもの自己肯定感に影響を与える2つの要素
8. 自己肯定感が低い子どもと「親」の関係
9. 自己肯定感が低い子どもと「友達」の関係
10. 自己肯定感が低い子どもと「教師」の関係
11. 自己肯定感が低い子どもとナナメの関係
12. 自己肯定感が低い子どもの現状
13. 自己肯定感が低いと引きこもりや不登校に繋がる?
14. 自己肯定感が低いといじめに発展する?
15. 自己肯定感に着目したカタリバの不登校支援

自己肯定感とは

東京都では自己肯定感のことを「自分に対する評価を行う際に、自分の良さを肯定的に求める感情」と定義しています。

自己肯定感が高い状態とは

自己肯定感が高い状態とは、自分を「かけがえのない存在、価値ある存在」として自分自身で認めている状態を指します。自分の命を大切にできなかったり、自分自身を一部分だけしか認められなかったり、自分に何も取り柄がない気持ちになっている状態は自己肯定感が高い状態とはいえません。

また、他者に対して「自分は人より優れている」などとして、自分より立場が弱い下の存在を作って自分以外の人を軽く視ることで自分を相対的に肯定することは、本来の自己肯定感が高い状態とはかけ離れています。

自分以外の周囲の人を尊重し、かつ自分自身も尊重できることが本来の「自己肯定感が高い状態」と言えます。

自己肯定感の類義語〜自尊感情〜

自己肯定感の類義語として「自尊感情」という言葉があります。心理学用語では、自己肯定感や自尊感情のことを英語でself-esteem(セルフエスティーム)と表します。

自尊感情とは

自尊感情とは、

  1. できることだけでなく、自分ができないことも認識した上で、その2つの要素をありのままの自分として認めている状態や気持ち
  2. 自分の長所・短所を踏まえて他者との関わり、その関わりを通して自分自身を価値のある存在と実感できる状態や気持ち

を指します。

自己肯定感が低い状態とは

自己肯定感が低い状態に陥っていると、自分のことを「どうでもいい存在、価値のない存在」としてとらえます。

自己肯定感が低い子どもの行動

自己肯定感が低い子どもの行動には以下のような様子が見受けられるとしています。

  1. 暴力行為がある
  2. モチベーションが低い
  3. 友達関係が上手くいかない
  4. 過敏に反応する
  5. 自分で判断できない
  6. 授業の理解度が低い
  7. 学校をよく欠席する
  8. 学校をよく遅刻する

(自尊感情や自己肯定感に関する研究報告書 平成 22 年 3 月 慶應義塾大学調べ)

自己肯定感が低い日本の子ども達

現代の日本の子ども達の特徴として「自他への肯定感の低下や欠如」が指摘されるようになっています。

「わが国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成25年度に内閣府 調査)」では、

  • 日本の子ども達の自己肯定感がいかに低いか
  • 日本の子ども達の自己肯定感が低いのは何が影響しているか

という2つの疑問に対する答えが示されています。

日本の子どもは「自分自身への満足度」が他国の3分の1以下

「私は、自分自身に満足している」という質問を、アジア圏にあたる日本と韓国、北アメリカ圏にあるアメリカ、ヨーロッパ圏にあたるイギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンにしたところ、”そう思う”または”どちらかというとそう思う”と答えた割合は以下のような結果になりました。

  • 日本    :そう思う 7.5% どちらからといえばそう思う 38.3%
  • 韓国    :そう思う 29.7% どちらからといえばそう思う 41.8%
  • アメリカ  :そう思う 46.2% どちらからといえばそう思う 39.8%
  • 英国    :そう思う 39.8% どちらからといえばそう思う 43.3%
  • ドイツ   :そう思う 29.1% どちらからといえばそう思う 51.8%
  • フランス  :そう思う 30.9% どちらからといえばそう思う 51.8%
  • スウェーデン:そう思う 21.3% どちらからといえばそう思う 53.2%

この調査結果から、日本の子ども達が「私は、自分自身に満足している」に対して「そう思う」と答えた割合が、他国に比べて3分の1以下になっていることがわかります。

他人との関係性で自己肯定感が左右される日本の子ども達

この調査では、自己肯定感に変化を与える要素についても調査しています。その結果、日本とその他の国では大きな違いがあることがわかりました。

それは、他国の子どもは「長所」「挑戦心」「主張性」など自分の内側にある内省的な要素と関連しているのに対して、日本の子どもは「人の役にたった、人から感謝された、人から認められたという自己有用感」に関する要素と関連が強いという点です。

この調査結果を翻ると、日本の子供にとって自己肯定感は「他人からの評価が中心になりやすい」ことを意味します。

子どもの自己肯定感に影響を与える2つの要素

子どもの自己肯定感に影響する要素として、「誰」から「どんなサポート」が受けたか、受けなかったかが影響を与えていることが研究論文等からわかっています。

自己肯定感に影響を与える3つのサポート内容

まず「どんなサポートが自己肯定感に影響を与えているか」についてご紹介します。それは、以下の3つに大別することができます。

  • 一緒におしゃべりする/一緒に出かけるなどの行動を共にすること(共行動的サポート)
  • 進路や勉強についてアドバイスをくれたり、相談に乗ってくれること(道具的サポート)
  • 落ち込んだら励まし、嬉しい時は共に喜んでくれること(情緒的サポート)

自己肯定感に影響を与える「親/友達/教師」

次に、子どもの自己肯定感が変動する要素として「誰からサポートを受けるのか」という点があります。この点について、子どもの自己肯定感に関する様々な研究結果から、子どもと過ごす時間が長い「親/友達/教師」からの影響が非常に大きいことがわかっています。

幼少期から小学生への影響力がある親

幼少期から小学生までは、親と過ごす時間が長いため、親からの影響が最も大きいと言われています。そのため、子育て中の親の間では、子どもの自己肯定感を高めるための育児について関心が高まっています。

思春期の子どもに影響力がある友達

思春期に入る小学校高学年〜中学〜高校までの間は、自立心が芽生え親離れが始まる時期でもあります。そこで子どもの自己肯定感に影響力が増してくるのが友達の存在です。また、高校受験や大学受験といった進路に関わる悩みがで始めるのも中学〜高校の時期です。学校の成績という明確な物差しの中で、勉学における出来不出来を自覚したり、進路決定の悩み、異性に対する悩みなど、自立に向けて様々な葛藤がでてくる時期でもあります。そんな中、同じ境遇にある友達からの影響が大きくなるのは自然な流れかもしれません。

男子中学生への影響力がある教師

男女差がでてくる影響力のある人物として教師が挙げられます。教師から受ける進路指導や勉強のサポートなど、男子中学生にとって自己肯定感を左右する傾向があると言われています。

一方、女子中学生の場合は、教師からのサポートは自己肯定感をあげることに影響が少ないと言われています。

では、自己肯定感が低い子ども達は、誰からどんなサポートを受けてこなかったことが影響しているのでしょうか。

自己肯定感が低い子どもと「親」の関係

自己肯定感が低い子ども達は、親から認めてもらえないなど自分の存在を受け入れてもらえない経験が幼少期から積み重なっている傾向があります。例えば、「親と子の意見が対立した時に親の意見を一方的に押し付けられる」「テストでいい点数を取った時だけ褒める」「誰かと比較する」などの行為が当てはまります。

このような行為がエスカレートすると、親から子への虐待といった問題に発展する可能性があります。虐待を繰り返す親もまた、幼少期に虐待を受けている例が多く報告されています。このような事例は、親自身の自己肯定感の低さが子どもへ連鎖することを示唆しています。

では、親がどのようなサポートを行うと子どもの自己肯定感が高まるのでしょうか。それは、共に過ごす機会を増やすこと、そして子どもの悩みや喜びに共感すること、進路や勉強に関してアドバイスや相談に乗ることなどが挙げられます。

自己肯定感が低い子どもと「友達」の関係

親との関係だけでなく、友達との関係も子どもの自己肯定感に影響を及ぼします。特に思春期に入った子どもにとって、影響力の大きさは親から友達に移行する時期でもあることを先ほどご紹介しました。

友達の影響力が増す時期に、いじめられたり仲間はずれされることで自分の存在を他者から受け入れてもらえない経験をしている子どもは、自己肯定感の低い傾向があると言われています。

また、思春期の子どもにとって、友達と一緒に出かけたり趣味について話をすることや、進路や勉強に関して相談をすること、日々の嬉しい/悲しいといった感情の揺れに共感してもらえていないと、自己肯定感が低くなる傾向にあります。

自己肯定感が低い子どもと「教師」の関係

自己肯定感の低い子どもは、高い子どもと比較すると落ち込んだ時や逆に嬉しいことがあった時に教師から共感してもらえる機会が少ない傾向にあります。

(参照:中学生におけるソーシャルサポートと自他への肯定感に関する研究)

自己肯定感が低い子どもとナナメの関係

カタリバでは、親や教師(タテ)でも友達(ヨコ)でもない、第三の立場として一歩先をゆく先輩として「ナナメの関係」を重要視しています。自己肯定感が低くなりやすい思春期にある子ども達を、ナナメの関係からサポートすることによって自己肯定感を高め、21世紀を生き抜く力を育む活動を行なっています。

自己肯定感が低い子どもの現状

東京都が平成20年度に小学校1年生〜高校3年生を対象に行った「自尊感情や自己肯定感に関する意識調査」で、自尊感情に関する18項目において「4:そう思う」「3:どちらかというとそう思う」「2:どちらかというとそう思わない」「1:思わない」という4段階を用意し調査したところ、その平均値は以下のような結果になりました。

小学生の自己肯定感の現状

  • 小学校1年生:3.56
  • 小学校2年生:3.47
  • 小学校3年生:3.33
  • 小学校4年生:3.25
  • 小学校5年生:3.18
  • 小学校6年生:3.14

中学生の自己肯定感の現状

  • 中学校1年生:2.99
  • 中学校2年生:2.99
  • 中学校3年生:3.13

高校生の自己肯定感の現状

  • 高校校1年生:3.02
  • 高校校2年生:3.00
  • 高校校3年生:3.05

この結果から、小学校1年から徐々に自尊感情が低くなり中学校1/2年で底をついた後、中学校3年生で一度自尊感情は高まるものの、その後高校に入るとまた下がることがわかりました。

自己肯定感が低いと引きこもりや不登校に繋がる?

自分の存在を認めてもらえない経験が積み重なると、受け入れてもらえない苦痛から自分を守るために不登校や引きこもりになる事例が報告されるようになってきました。

全国の不登校児童数の推移(人)

文部科学省が調査している不登校児童数の推移を5年ごとに抜粋した数値は以下の通りです。少子化が進んでいるにも関わらず、年々不登校児童数が増えていることが明らかです。

年度 小学校不登校児童数 中学校不登校児童数 高校校不登校児童数
1994 15,786 61,663 調査データなし
1999 26,047 104,180 調査データなし
2004 23,318 100,040 67,500
2009 22,327 100,105 51,728
2014 25,866 97,036 調査データなし

(参照:文部科学省 平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)

ちなみに不登校の経験者に行った「不登校時から回復期に影響を受けたサポート」に関する調査では、2つのサポートが重要であることがわかっています。

  • 否定的な自己イメージを肯定的な自己イメージにあげること
  • 対人的な情緒面での交流(特に友達からの励ましや理解の声など、肯定的なフィードバック)

2点目の「対人的な情緒面での交流」によって自分の存在が他者から認められるようになると、自己肯定感が上がり、このことが不登校の改善に寄与していると言えるでしょう。

自己肯定感が低いといじめに発展する?

自己肯定感が低いと、自分より弱い立場の他人に対して攻撃的になる傾向があります。

逆に、いじめの被害にあった際に、自己肯定感が高い子どもは「いじめをやめて欲しい」と言えたり、「誰かに相談する」と言ったいじめの解決に向けた行動が取れるのに対し、自己肯定感が低い子どもは相談などせずに我慢や諦めの傾向にあることもわかっています。その原因は、自己肯定感の低い子どもは相談機関への不信感や警戒心が強いことがわかりました。

このように、自己肯定感が低い子どもは、いじめの加害者になったり、いじめの被害者になった時に解決の糸口を見つけづらい傾向にあることがわかっています。

(参照:2008年度「川崎市子どもの権利に関する実態/意識調査」)

自己肯定感に着目したカタリバの不登校支援

カタリバでは、自己肯定感に着目した不登校児童の支援や、思春期の子ども達へキャリアサポートを行なっています。

親や教師というタテの関係でも、友達というヨコの関係でもなく、大学生などのナナメの関係から子ども達の本音を引き出し、先輩の話をすることでロールモデルを示しながら、子ども達に目標設定をしてもらうなどの活動を行なっています。

このようなサポートを通して、「どうせ無理」「やっても無駄」という自己肯定感の低かった状態から「やってみよう」「やってみたら自分のいいところが見つかった」「もっと挑戦してみよう」という変化につなげています。

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