カタリバは2016年8月より足立区から委託を受け、困難を抱える子どもたちの居場所「アダチベース」を運営しています。アダチベースでは、学習支援や食事支援のほかに、子どもたちの可能性や興味を広げるための、体験型ワークショップを定期的に行っています。その一環として、先日「映画上映ワークショップ」を行いました。
今回の「映画上映ワークショップ」でメインに取り上げた作品は、アニメーション映画「TheDamKeeper(ダム・キーパー)」。
監督は、堤大介さんとロバート・コンドウさん。2人は、世界的な映像制作会社ピクサーでアートディレクターなどを務めていましたが、2014年、アニメーションスタジオ「トンコハウス」を設立し、「TheDamKeeper」を製作しました。オリジナル短編アニメーション映画の本作品は、2014年ベルリン国際映画祭で公式上映され、世界中の国際映画祭で20以上もの賞を受賞し、2015年には米国アカデミー賞短編アニメーション部門でノミネートされています。
そして、今回のワークショップでの上映にあたっては「トンコハウス」さんより無償提供いただきました。
ワークショップでは、まず、普段は何気なくテレビで観ている「アニメ」について、深堀しました。アニメーションの歴史、発案から1本の作品となるまでどのような工程があり、どのような人々が関わっているのかという制作フローなどを取り上げました。
「へー、こんな風にアニメって作るんだ!」と驚いた様子の子どもたち。
アニメ―ションの裏側を学んだあとは、「TheDamKeeper」を鑑賞しました。
物語の主人公は”ブタ君”。大気汚染から街を守るために、たった一人で風車を動かす仕事に、周りから孤立しイジメられながらも、ひたむきに取り組んでいます。そんなある日、クラスに”キツネ君”という転校生がやってきて…。
クレヨンで描いたような温かいタッチの絵柄とは対照的に、環境破壊や差別、イジメなどの課題を突き付けてくるストーリー。
セリフはほとんどなく、映像と音楽だけで静かに物語が進んでいきます。あっという間に観ている子どもたちとスタッフ全員が引き込まれました。
鑑賞後は、互いに感想を言い合いました。
「イジメはやっぱりいけないと思った」
「暖色がメインに使われていて温かい印象だった」
「直線が使われていなかったから映像が柔らかかった」
物語への共感から映像表現の細部まで、多様な観点での感想が、子どもたちから出されました。
今回のワークショップを通じて、「普段何気なく身の回りにある物事」について、少し詳しく学んでみると「いつもとは別の視点で見えてくる」ことを学んだ子どもたち。
アダチベースでは、これからも様々な素材・題材をテーマに、子どもたちが新しい見方や考え方を学ぶ出会いを作っていきます。