【レポート】「全国高校生マイプロジェクトアワード2016」開催 〜自ら考え行動した経験 これからの学びを変える力に〜
「今日は5年後10年後、何かを頑張ろうと思った時に、応援し合う仲間をつくってください。だから、みんなでMake Friendsと言うことから始めましょう。いきますよ、Make Friends!」
マイプロジェクト実行委員長であり、文部科学大臣補佐官である鈴木寛さんのパワフルな唱和から始まった「全国高校生マイプロジェクトアワード全国Summit2016」。開催日の3月25日・26日は冷たい雨が降るあいにくのお天気でしたが、会場となった東北芸術工科大学外苑キャンパスは熱気に包まれていました。
マイプロジェクトアワードとは、地域やコミュニティなど身の回りの課題に対して自ら考え行動した高校生が、自分のプロジェクトを発表したり、フィードバックをもらったり、同じ思いを持つ全国の同世代と共に学び合う「学びの祭典」です。
第4回目となる今年は、過去最大となる222エントリーの中から、書類審査、オンライン大会・地域大会(東京、関西、北九州、東北)を通過した32プロジェクトが全国Summit(全国大会)へ進出。25日のAll Star Teamプレゼンテーション(全員プレゼン)の結果、学校部門、個人・グループ部門からそれぞれ4プロジェクトが代表発表へ駒を進めました。
■代表発表プロジェクト
【学校部門】
・「市松COSMOS」半径5km内の地域貢献活動(千葉県 松戸市立松戸高等学校)
・被災地に緑を!〜全国の高校生と挑戦した環境保護活動〜(静岡県立富岳館高校)
・Kamakura English Tour(鎌倉学園高等学校)
・堂上鉢屋柿 Activation Pro 〜美濃加茂市から世界へ発信!!〜(岐阜県立加茂農林高校)
【個人・グループ部門】
・高校生で街に彩を(岩手県)
・AEDi(和歌山県)
・高1が届けるクマモトの声(熊本県)
・ホヤの魅力を全国へ(宮城県)
26日の代表発表では、最高賞である「文部科学大臣賞」を目指して、8プロジェクトが熱のこもったプレゼンテーションを繰り広げました。
マイプロジェクトアワードが重視するのは、取り組んだプロジェクトをいかに「自分ごと化」し、実際に行動を起こす主体性と行動力および、その経験から学び続ける姿。
審査の結果、今年の文部科学大臣賞には、学校部門から「被災地に緑を!〜全国の高校生と挑戦した環境保護活動〜(静岡県立富岳館高校)」、個人・グループ部門からは「AEDi(和歌山県)」がそれぞれ輝きました。
学校部門で最高賞となった静岡県立富岳館高校の「被災地に緑を!〜全国の高校生と挑戦した環境保護活動〜」は、富士山から採取したキノコから新たな環境ホルモンを発見。乾燥・塩害に強い特性を生かし、東日本大震災の津波被害でシバの育成が進まない堤防の緑化整備を実施するというもの。高校生離れした取り組みに加え、東北の幼稚園児にエコ授業を行ったり、モンゴルなど海外にも活動の幅を広げるなどの行動力が高く評価されました。
実行委員長である鈴木寛さんは、「まさに超高校級。このまま世界的なソーシャルアントレプレナーになるだけの資質を感じた。ぜひ世界へのムーブメントにつなげていってほしい」と賛辞を贈りました。
プロジェクトを実施した生徒は受賞にあたり、「3年間の中ではプロジェクトをやめようと思ったこともありました。でも高校生活頑張ってよかった!」と喜びを語りました。
個人・グループ部門で最高賞に輝いた「AEDi」は、年間7万人と言われる心臓突然死を減らそうとAEDの有効活用を試みたプロジェクト。全国に64万台設置されているにも関わらず、使用率はわずか3.7%の原因を「発見者がAEDを思いつかない・場所がわからない・AEDと現場を往復しなくてはならない」と考え、「現場から取りに行くAED」から「やってくるAEDのシステム」を消防署や市役所も巻き込んで構築しました。
「AED開発に携わるメーカー、政府が一丸となって普及活動に携わったが、持って行くという発想はこれだけの大人がいながらできていなかった。多くの人を巻き込んで、119番まで使ってその有用性を証明した。世界に通用するプロジェクト!」と、鈴木寛さんが受賞の理由を述べました。
「AEDi」に取り組んだ高校生は「プロジェクトを通じて大人の優しさや社会の厳しさを知ることができました」と語り、「自分に協力してくれた大人の皆さんのように、自分も人に協力できる大人になりたい」とプロジェクトを通じて芽生えた未来の自分像を伝えました。
各部門の受賞プロジェクトは、以下の通りとなります。
☆文部科学大臣賞 学校部門
「被災地に緑を!〜全国の高校生と挑戦した環境保護活動〜(静岡県立富岳館高等学校)」
☆文部科学大臣賞 個人・グループ部門
「AEDi(和歌山県)」
☆ベストオーナーシップアワード
「ホヤの魅力を全国へ(宮城県)」
☆ベストアクションアワード
「Kamakura English Tour(鎌倉学園高等学校)」
☆ベストスピリットアワード/高校生特別賞
「堂上鉢屋柿Activation Pro 〜美濃加茂市から世界へ発信!!〜(岐阜県立加茂農林高校)」
☆ベストクリエイティブアワード
「市松COSMOS 半径5km内の地域貢献(千葉県 松戸市立松戸高等学校)」
☆ベストコラボレーションアワード
「高校生で街に彩りを(岩手県)」
☆ベストテーマアワード
「高1が届けるクマモトの声(熊本県)」
どのプロジェクトにも共通するのは、圧倒的な当事者性をもって「やりたくてやってきたんだ」という真剣な想い。悩み、苦しみ、時に泣きながら、たどり着いたこの場所で、高校生たちはかけがえのない仲間と、さらなる学びを得たようです。
「同じ想いを持った高校生や大人の方とたくさん出会って繋がれて嬉しかった」
「『何かしたい』と思ってアクションを起こしたすごい人たちが全国から集まっていて、本当にワクワクしました。この3日間の中で、素直に生きることの難しさと大切さ、一歩踏み出すこと、とにかくやってみるぶつかってみることの大切さに気付かされました」
「失敗がなければ成功には近づけないことを学びました」
「今までは誰かがやるだろうとか、今じゃなくてもいつか…と踏みとどまってしまっていました。しかし、今じゃなかったら後悔する、今少しの勇気を出すだけで未来が変わっていくということを感じました」
審査員を務めてくださった渡邊奈々さん(一般社団法人アショカジャパン創立者/代表理事)はマイプロジェクトに取り組む高校生に、こう語りかけました。
「一時的な高まりではなく、持続するパッション。そんな溢れて、止まらないパッションが出てくる人たちが結果的に世界を変えていく」
この言葉に象徴されるように、溢れ出る情熱を継続させながら、プロジェクトに取り組む高校生の姿は見る者の心に変化をもたらしました。
同年代の高校生は仲間の発表から次なるエネルギーを得、見学に訪れていた中学生は先輩方の姿に「次は自分があの場所に」と、新たな目標を見つけました。
「自分たちも負けていられない」。もう一度胸を焦がすようなチャレンジをしたくなった大人もいます。
自分で考え行動し、学び続けてきた経験は、誰も知らない未来を切り開く武器になります。
この日、想いを持ったアクションは確実に周りを動かす力となっていくことを、高校生たちは体現していました。
次の「全国高校生マイプロジェクトアワード2017」では、どんな高校生たちに出会えるのでしょうか。カタリバはこれからもマイプロジェクトを持った高校生を応援します!
▼大会の模様は、4月10日付の日本教育新聞にご紹介いただきました。
【メディア掲載】日本教育新聞社 ~社会課題を解決するアイデアを競う、全国高校生マイプロジェクトアワード
▼全国高校生マイプロジェクトアワード2016の詳細はこちらから
全国高校生マイプロジェクトアワード2016 WEBサイト