「マイプロジェクトアワードは頭の中にある想いを言葉にできた、貴重な時間」
■個人商店を起点とした町おこしを
岩手県大槌町出身の瞳さんは中学1年生の時、東日本大震災で自宅と実家が営む鮮魚店を失いました。
その後、「あなたたちは大槌の希望の星」と語る大人たちの言葉を重荷に感じていたころもありましたが、徐々に町のために何かしたいという気持ちが芽生えてきたといいます。
考え抜いた末に、瞳さんは実家の個人商店を起点としながら、町おこしに取り組むというマイプロジェクトに辿りつきました。
「自分を育んでくれた個人商店の良さを伝え、町の活性化につなげたい。」
魚介セットに町やお店の歴史、魚料理のレシピを手書きした冊子を添え、通信販売しました。マイプロジェクトアワードでは、身近なところにある可能性に着目し、着実に取り組む姿勢が高く評価されました。
■いろんな運命が重なって、ここにいる
マイプロジェクトアワードに参加した感想を伺うと、
「始まる瞬間から感動していた」という瞳さん。
今までずっとコツコツと一人で進めてきたプロジェクトだっただけに、会場に到着した時から「震災のこととかいろんな運命が重なって、ここにいられるんだ」。胸が熱くなったと言います。
アワード参加中はずっと緊張していたそうですが、「自分の頭の中にある想いを言葉にすること」を楽しもうと挑みました。
実際、同じようにマイプロジェクトに取り組む仲間との出会いや、彼女の「想い」に真剣に耳を傾けてくれる人々に囲まれた時間は、安心して言葉を発信できる貴重な機会だったといいます。
中でも思い出深いのは、3日目に行われた「振り返り」のプログラムの中で、「1年後の自分へ」という手紙を書いている時。改めて、「いろんな運命や出会いがあったからこそ自分はここにいる」。感謝の気持ちが涙と共に込み上げてきました。
気持ちを落ち着けるために深呼吸しながら書いた手紙には、「いろんな辛いこともあるだろうけど、そのままの自分でいてね」。4月から大学生になる自分へのエールを送りました。
■地方にしかない“あったかいもの”をみつめていきたい
大学生になった現在も自分のプロジェクトは続けていきたいと語る瞳さん。プロジェクトを通して個人経営の店の価値を再確認したからこそ、やり方や伝え方の手法は変えていくかもしれないけれど、東京から町の復興を盛り立てていこうと決意しました。
いま、瞳さんの頭の中には、個人経営や小さいビジネスを営む方々が連携し、力を持った町となった将来の大槌町の活気ある姿が浮かんでいます。実現に向け、「大学では経営の視点、町づくり、政策の勉強をしながら、人のつながりとか、地方にしかない“あったかいもの”をみつめていきたい」。そう力強く語ってくれました。
心の中にあった自分だけの「想い」を言葉にしようと決めた瞬間から、瞳さんの夢は着実に前進しています。
佐々木瞳さんの取り組みは、4月10日付の朝日新聞・岩手県版にもご紹介いただきました。