合格発表、卒業式、そして「やくそく旅行」へ
こんにちは、NPOカタリバ山内です。
3月も後半です。コラボ・スクールでは中3生の高校受験、
合格発表がありました。おかげさまで、たくさんの生徒が
合格することができました!
ご支援いただいた皆様、ありがとうございました。
そして卒業式。大槌臨学舎では、カタリ場を開催。
“なりたい高校生”をイメージし、一年後の自分との約束を結びました。
昨日から、約30名の中3生が「やくそく旅行」のため上京しています。
20日(水・祝)の発表会、ぜひいらっしゃってください。
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さて前号で紹介した、大槌臨学舎に通う高校1年生、
吉田優作君による「高校生MyProject」。
今号ではその後編をお届けします。
「どんなに立派な石碑や像をたてても、時代とともに震災の記憶は風化してしまう。
だから僕は4年ごとに建て替える木碑に住民の思いを刻み込み、
建て替えという文化を創って、震災の記憶を伝え残す。」
このような強い想いを抱いてプロジェクトを始めた優作君ですが、
さっそく乗り越えなければならない壁に、ぶつかります。
※前号の記事はこちらから
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最初の木碑を建てる地として、
彼が選んだのは「安渡古学校地区」。
1月の寒い日、木碑の設置許可をお願いをするため、
優作君は自治会長さんを訪ねます。
「今後起こる震災によって犠牲となる命を一人でも
減らすため、木碑を建てたい」
彼が伝えた熱い想いとは対照的に、
返ってきた返事は、色良いものではありませんでした。
津波が途中まで押し寄せ、仮設住宅の方々と
残った家で暮らす方々とが半々くらいの割合で暮らす、
この安渡古学校地区。
平均年齢が65歳と高いため、
「高齢者ばかりだから、何年かに一回という文化を
根付かせるのは難しい」というのです。
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MyProjectでは、参加する高校生と臨学舎スタッフが集まって
それぞれのプロジェクトの進捗や課題を報告する、
定例のミーティングがあります。
「そういうのは、行政に任せた方がよいことなんじゃないか?」
そんな言葉とともに諭された体験も交えながら、
優作君は進め方を迷っているとミーティングで報告します。
そこでスタッフから、言われたことです。
「優作は、そう言われたからってやめていいの?
『いつか誰かがやる』ってみんな言うけど、
結局は誰も動かないことになってしまう。
『待っていれば、どこかの誰かが復興してくれる』じゃなくて、
自分が地域にできることは何か?を考えるんだよ。」
優作君はその1週間後、今度は想いを書き込んだ企画書を携え、
もう一度自治会長さんを訪ねます。
たどたどしい説明も、一生懸命さが伝わったのか・・・
今度は、了承をもらえました!!
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2月に入り、木碑の建立に向けて始まった準備作業。
土台を作るため、次は建設会社の社長さんに協力をお願いしにいきます。
「4年に一度、3月11日にこの木碑を住民と一緒に
つくり直すことを地域の文化にしたい。」
彼の想いに心を動かされ、無償で作業のご協力をいただけることに。
その後も、紹介してもらった木工店や石材店などにも協力して
いただけることになり、たくさんの大人たちを巻き込んでいきます。
また、木碑に刻むメッセージは、町民みんなで決めることにしました。
そのために、住民同士でお茶を飲みながら、メッセージを話し合う会を開きます。
優作君と、一緒にプロジェクトを進める高校生たちで
一軒一軒を回って、ビラを配りながら案内したところ、
多くの住民に参加してもらえました。
そして、木碑に刻む言葉も決まります。
「大きな地震が来たら戻らず高台へ」
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いよいよ迎えた3月11日。
木碑の設置セレモニーを行いました。
※当日の様子はこちら
「4年後、8年後、12年後、16年後、20年後、
たとえどこに暮らしていても、必ずここに戻ってきて、
木碑の立て替えをみんなとやる。そうして、次の世代につなげていく」
優作君はプロジェクトの未来を誓うとともに、
この体験を通じて学んだことをつづっています。
「このプロジェクトを行ってみて、たくさんの人に助けられて
周りの人がいる大切さを学びました。
自分の思いをちゃんと相手に伝える場面もたくさんあって、
そのたびに他人に向けての伝え方も知りました。
そして多くの人と接していくうちに自分自身を
成長させることにもなりました。」
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このプロジェクトでは、今回設置した木碑のほかに、
半年以内に、大槌町内と町外に1本ずつ木碑を建造することを
目指しています。
今回は無償で協力をしていただくことができましたが、
木材費や制作費など、40万円の費用がかかる計画です。
先週終わり時点で集まったのは、114,000円。
「これから大災害を体験する人たちに自分たちのように
大切な人を一瞬で奪われるつらさを体験してほしくない」
「同じ過ちを繰り返すのは自分たちの世代で最後にしたい」
彼の想いにご共感いただいた方は、
ぜひ寄付でご支援いただけますでしょうか?
【ご寄付を募集しています】
「震災の記憶を後世の人たちに残したい
~3.11復興木碑設置プロジェクト~」
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「決して学級委員でも生徒会長でもない、
どちらかというと目立たない生徒である彼が元々持っていた力が、
震災後の様々な出会いの中で引き出され、こういう形で地域に一つの文化を
提案する『マイ・プロジェクト』になった」(代表理事 今村久美より)
この「高校生MyProject」では、高校生一人ひとりが“復興の当事者”として
小さなところから行動することで、地域の課題を解決するとともに、
復興を担う未来のリーダーを育てることを目指しています。
4年後に優作君は、大学2年生の歳に。
彼は、防災学を学ぶために大学への進学を希望しています。
【その他の高校生MyProject】
・Starry Night In 大槌プロジェクト
・地域のみんなで作る公園プロジェクト
・100人Photosプロジェクト