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分断が広がる社会で、全ての子どもが行きたいと思える学校をつくりなおす[代表のつぶやき]

vol.364Voice

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category #代表のつぶやき

writer 今村 久美

3月17日より、第13期中央教育審議会(総会)がはじまりました。中教審とは文部科学省の審議会で、日本の教育の方向性を話し合い、文部科学大臣に提言する専門家の会議です。2年に1回区切りがあり、参加させていただくことになって4周目となります。

私がはじめて参加させていただいた第10期の時は39歳で、就任時は女性最年少などとメディアに書いていただきましたが、今回ご参加されるバイオリニストの廣津留すみれさんは31歳。年齢でどうこうというわけではないし、本当に聡明な方だなとご発言からも感じましたけど、やはりこの任命自体、素晴らしいなと思いました。また、第10期の際の40代以下は私と長谷川敦弥さんの2名だった記憶がありますが、今回の第13期では目視で5名(たぶん)。

もちろん性別や年令で顔ぶれ揃えるのはどうなのかという意見があるのもわかりますが、このフィルターバブル時代、世代のギャップはとても大きいように思います。一緒に議論することが楽しみです。

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当日は2分以内で順番に意見を述べるという設定でした。時間もなくうまく伝えきれなかったので、手元に準備していたメモをここに残しておきます。
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不登校34万人。今のままでは学びに向かえないと、こどもたちから我々への評価をくだされている現状がありますが、その受け皿のあり方について、私の感覚では去年、臨界点を超えたように感じています。

いま、各地で新たな学校の形が実践されています。たとえば学びの多様化校は各地で増え、現場は日々努力をなされていますが、そのキャパシティは少なく、スピードは全く追いつきません。
新しいタイプの私立学校も出てきました。しかしそこに行ける子どもはほんのひと握りです。

現実的に起きていることとして、不登校のご家庭が頼るのは、一条校ではない、様々な民間の取り組みです。
これまでは、NPOや当事者の方によるフリースクールなどが、公教育の外縁で、十分な財源もない中、こどもたちの受け皿をつくってくださっていました。しかしこれも全く足らない状況が続いていました。

臨界点が超えた感覚を持っていると申し上げたのは、その受け皿の担い手として、大手学習塾事業者の方々による不登校の子どもたちの受け入れ、新しい形のフリースクールの設置が同時多発ではじまったという点です。

学校に通学すると髪の毛を抜き爪を剥いでしまうほど体調の異変をきたしていたというとあるお子さんは、学習塾が提供するフリースクールに行きはじめ、人が変わったように学びが楽しくなったと言っていました。こういった選択肢が増えたことは素晴らしいことだと心から思いますし、これを否定するつもりはありません。むしろここからの学びは多い。

しかしこれは、市場による課題解決が、公教育の改革よりもずっと早くおきている、しかも多くの人にそれが、支持されはじめているということだとも言えるとこの会議では認識すべきと思うのです。

市場では、支持されないものは淘汰されていきます。
例えば学校教育で取り組む特活(学級会やそうじなど)のような時間は、例えば中学受験には不要に見えてしまうとしたら、その時間は選択するのをやめてしまおう、例えばそんな未来につながるのでないかと不安も感じます。(私は、学校の特別活動の時間こそ、充実させるべき価値ある経験だという立場です)

分断が広がるこの社会の中で、学校は共生社会をつくるための大事な装置です。全ての子どもが行きたいと思える学校をつくりなおす。公教育が変わるためのスピードを加速すべきです。

例えば学校のスタッフのあり方は、教員と同数くらい、教員以外の人が参加する場所にすることで、学校を多様な価値観が溢れる場所にかえていけるかもしれない。
こどもたちの学びが社会に開かれ、安心して失敗しレジリエンスを獲得したり、たくさん心を震わす機会を持つために、学校にコーディネーターやナナメの関係の先輩たちがたくさんいたら、居場所を見つけられない子もみつけられるかもしれない。

いま不登校の子供たちが、強制ではなく、学校に行きたいと、もう一度思えるようになる公教育を作り直したい。そんなふうに願います。

重ねますが、民間事業者による非一条校の教育現場で起きているグッドプラクティスを否定せず、むしろそこから学ぶべきです。
しかし、義務教育の市場化はにわかに起きていること、そのリスクも、すでに起きている現実として認識すべきだと思います。

公教育のあり方を変えていく。共生社会の処方箋としての学校を、作り直すべきだと感じています。

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Writer

今村 久美 代表理事

79年生まれ。岐阜県出身。慶應義塾大学卒。NPOカタリバ代表理事。ここではゆるくつぶやいていきます。

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