「2025年 新年のご挨拶」代表理事 今村久美
新たな年となりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美です。
災害や物価高など様々なことが起きている中でも、子どもたちの無限の可能性を信じ、カタリバと共に子どもたちへのあたたかい応援を送り続けてくださっていますこと、心より御礼申し上げます。
2025年という新たな年の始まりにあたり、まず心に浮かぶのは「能登のみなさまが今日をどのような思いで迎えられているのか」ということです。
今日「2025年1月1日」は、年初めであると同時に「令和6年能登半島地震」から丸一年です。
現地は9月の豪雨被害も重なり、復興までにはまだまだ遠い道のりだと感じています。
私たちカタリバも試行錯誤しながら支援活動に取り組んではきましたが、現地の厳しい状況を鑑みるに、もうしばらく能登の子どもたちを見守っていく必要性を感じているところです。
一年前、能登での緊急支援活動がスタートした際は、全国の方々が応援してくださることに大変はげまされました。
冒頭の写真で真ん中に写る女子高校生とは、彼女が珠洲市の避難所に身を寄せていた際に出会いました。
彼女は子どもの居場所に毎日のように足を運んで一緒に運営に取り組み、小さな子どもたちと遊んでくれました。
昨年末、この写真を撮った際に久しぶりに話したところ、関西の大学への進学が決まったとのこと。
避難所での生活も長かった彼女が次の道へ進むことが決まったと聞き、本当によかったなと思いました。
また、支援現場に駆けつけてくれた「東日本大震災のときに子どもだった若者たち」の存在にも勇気づけられました。
「あのとき助けてもらったから、今度は自分が力になりたい」
そう言って、能登の支援活動に参加してくれました。
彼らが能登の中高生たちと対話した際は、「無理にがまんせず、自分のやりたいことをやった方がいい」と、かつて子どもとして被災し、支援を受けた経験があるからこそ言える本音の言葉をかけていました。
その様子に私は、「カタリバの活動は、時間をかけて、子どもたちを通じて『未来をつくる』活動だ」と改めて気づかされました。
岩手出身の大学生(写真左)の話に耳を傾ける、能登の高校生たち
「中高生のときに傍で支えてもらえたことで、今の自分があります。今度は自分が子どもたちを応援していきたい」
そう夢を話す、カタリバの卒業生がいます。
彼女は、中学3年生から高校3年生までの4年間、カタリバが運営する居場所施設に通っていました。
カタリバは子どもたちが自分の足で通える居場所施設を運営しています。
またオンラインを活用した形でも、子どもたちの日常を応援しています。
そのほか連携団体 ・自治体が運営する拠点も含めると、居場所拠点は全国40か所以上になります。
勉強をしたり、ご飯を食べたり、季節の行事を楽しんだり。スタッフが「お帰り」と出迎え、「また明日」と笑顔で見送ります。
時にぶつかり合うこともあれば、努力し達成できたことを、泣いて喜びあうこともあります。
居場所施設ではスタッフと子どもたちで食事の準備を一緒にすることもあります
卒業生の彼女も、通い始めた当時は「誰のことも信用できず」心を閉ざしていたそうです。
けれど、毎日気にかけてくれるスタッフに、少しずつ心を開き、本音を話すことができました。
そして卒業する頃には「『ただいま』『おかえり』と言えるような、あたたかな場所を子どもたちに作りたい」という夢を見つけ、実際に子ども食堂の運営に挑戦しました。
昨年4月からは児童養護施設の職員として、日々、子どもたちに向き合っています。
一朝一夕で、子どもたちが自立するわけではありません。
スタッフが日々、声をかけ続けるなかで、本人たちも気づかないくらい、ちょっとずつ大人になっていきます。
カタリバはこうした「子どもが大人になる」までの長い時間、子どもたちの日々に伴走しています。
災害があっても、コロナのようなことがあっても、家の経済事情が厳しくても、ケアが必要な家族がいる状況であっても、「応援してくれる誰か」が傍にいることが、困難な状況を乗り越えていく力になります。
ご支援くださる全国の方々と一緒に、2025年もあたたかく、力強く、丁寧に、子どもたち一人ひとりと向き合ってまいりたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆様のご健康とご多幸を祈願しております。
2025年1月1日
認定特定非営利活動法人カタリバ
代表理事 今村久美
写真1枚目:代表理事・今村(写真左)は、能登半島・珠洲の避難所で生活する高校生たちと出会い、発災直後から一緒に小学生たちの遊び場づくりに取り組みました