不登校の現状をふまえ、いま取り組むべきことの提案[代表のつぶやき]
2022年12月21日の文科省中央教育審議会「義務教育の在り方ワーキンググループ」にてお時間をいただきました。ざっくり論旨は下記になります。
1)不登校調査のやり直し(設問の見直し)をすべき。orセットで深堀調査を定期実施すべき。今の調査は当事者の声ではなく、学校の認識確認調査になっており、問題の本質が見えてこない。当事者の声と学校の認識を両方確認した上で、誰一人取り残さない十分な政策にいくらかかるのか、検討したい。このままでは、次々期の教育振興基本計画を策定する5年後(次期は次の4月から)までに、各県不登校特例校1校づつやっとそろいました→しかし多くの子は地理的に通えないしキャパもありません→通っている子はいいけど、行けない子の方が圧倒的に多いままで不登校は5年前の倍になってます。という状況になりかねないと思います。
2)最重要数字として扱うべきは不登校25万人ではなく、長期欠席41万4千人の方。特に「コロナ回避長欠」6万人、「その他要因長欠」5万2千人という数字が積極的な長欠なのか、本当は行きたいのにいけない欠席なのかわからない。もし行きたいのに行けない欠席だとしたら、「その他」ではなく「不登校」として扱い、政策検討の対象とすべきです。また、積極的不登校(フリースクール利用者等も含む)についても、育ちの確認(健康診断など)だけは行政として把握しないと、例えば虐待の発見も遅れてしまいます。
3)不登校の公的支援施設である「教育支援センター」を、退職教員の方々による学習支援施設というあり方から、支援資源とのマッチングハブにアップデートしよう。
図書館など公営施設や、民間フリースクール・オンラインなども含め、当事者の子どもを真ん中において支援資源と接続し、健康や学習の様子を定期モニタリングする。そして誰が取りこぼされているのかに最前線で気づけるように取り組もう。(事例:島根県雲南市 おんせんキャンパス)
4)どんな地域に住んでいても質の高い支援が受けられるように、メタバースのシェア型教育支援センターの可能性を公式に検証しよう(オンラインの場合、自治体ごとにエンジニアや支援者を置くのは無駄)。そして、地方の学校や行政とシェア型メタバースがどう連携するか、実証研究しよう。教育と福祉は今後、脱自前主義のあり方検討を本格化すべきです。(事例:room-K)
5)スクールカウンセラー(SC)のリモートワーカーを増やし、実質的な24時間勤務体制を実現しよう。そしてオンラインSCも学校のチームの一員としてマネジメントする。現状の、月に数回・数時間のみ勤務するSCだけでは、相談ハードルが高すぎる。また、地方では心理職ではない人(例えば元教員等)がSCになっているケースも多い。元教員でも素晴らしいSCもいれば、心理職でも微妙な人もいるけど、実際、支援の質は地域によって差がありすぎることを再認識したいです。(例:相談チャット・マイシェルパ)
先生たちに無理を強いて、子どもたちの声なき声に誰も気づけない。そんな現在地の日本の公教育。技術的にはできるのに、縦割りだからやっていないだけ。工夫の余地もまだまだたくさんあります。みんなのアイデアを駆使してみんなでコミットメントして、子どもたちが穏やかで幸せだと思える毎日を過ごせる当たり前の未来を、みんなで作っていきたいですね。提言よりも実装するのが私たちの仕事です。2023年も現場をひとつづつ、作っていきたいと思います。
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