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「2022年 新年のご挨拶」代表理事 今村久美

vol.234Voice

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category #代表のつぶやき

writer 今村 久美

明けましておめでとうございます。
NPOカタリバ代表理事の今村久美です。

去る2021年、みなさんはどんな年でしたでしょうか。

給食での会話も放課後の遊びも制限され、生活様式の変化や長引く感染不安もある中、子どもたちはもちろん、大人たちも、みんな頑張ってきた2年間だったことと思います。

2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、マスク越しに最低限の会話をし、やりとりをオンラインで代替していく社会になりました。オンラインだと表情が見えるけど、対面で人と話すときはマスクで顔の半分が隠れているというのも、不思議な気分でした。

地域のお祭りもイベントも減って、家族以外の人のふいに居合わせて交わしていた雑談のような時間が減りました。余白をなくす人が増えたと感じます。

家庭にいる保護者でも先生でもない、近所の面白いお兄さんお姉さんや「こんな人になりたい」と思わせてくれる先輩。そんなナナメの関係も、この2年間、とてもつくりにくいものになってしまいました。

カタリバではそんな状況下でも、さまざまな環境で生きる子どもたちが孤立しないよう、機会を届け続けてきました。昨年新しく始めたことの1つに、オンラインを活用した不登校支援があります。

文科省調査によれば、不登校の小中学生は全国で19万6127人へと増え、過去最多となっています。「病気」「経済的理由」「新型コロナウイルスの感染回避」などの理由も含めると、年間30日以上学校に行けていない長期欠席の子どもは28万7747人にも上ります。

でも学校の先生たちも、もともと忙しかった仕事に加え、休校などに伴う授業調整やオンライン対応などに追われ、子どもひとりひとりのケアをやりきれない。マスク越しでお互いの気持ちも見えづらく、うまく信頼感もつくれないままに子どもが来れなくなってしまう。そんなもどかしい状況があったと思います。

かといって、不登校を支援する行政の施設を設置している自治体も、全国で約6割と限られており、設置されていても地理的に通うことが難しかったりと、学校に行けない子どもの居場所は非常に少ない状態でした。

カタリバではオンラインを活用して、そうした子どものための学び場「room-K」を始めています。コーディネーターが保護者・子どもと面談して個別支援計画を作成し、ひとりひとりの発達や特性に合わせたオリジナルの時間割をもとに、最適化された学びの時間を過ごします。

「定期的な作戦会議があって、子どもが目標を持って生活できています」「海外に行ってみたい、英語が話せるようになりたいと口にするように。全く勉強に手をつけていなかったけど、時々教科書を開いているようです」「”僕にはカタリバがついている!”と家で話しており、親以外の人と信頼関係を結んで、学習できているのが嬉しいです」 そんな声を、保護者の方からはいただいています。

また、不登校の子どもを持つ保護者の方たちからたくさんのお話を聞かせていただく中で、保護者を支える大事さに気づき、カタリバでも積極的に保護者支援を始めました。

不登校の保護者の方たちは、仕事を減らして家で子どもを見たり、あちこちの相談機関に行ったりしていますが、望む支援になかなかたどり着けずに疲弊・孤立している人が多くいます。社会には「親なんだからしっかりと」という目もありますが、保護者もひとりの人間であり、完璧な存在ではありません。

不登校の子どもの保護者同士がゆるく話し合える場を定期的に設けたり、支援先探しなどについて個別に話を聞くオンライン相談を行うことで、少しでも保護者ケアができればと思っています。コロナ禍の中で経済相談なども増えたため、不登校に限らずなんでも相談できるような無料LINE相談も始めています。

 

そんな風にあの手この手で動いてきましたが、自分たちだけでサポートを届けられない子どもたちは、まだまだたくさんいます。オンラインでできることが増えたとはいえ、リアルに顔をあわせられる居場所も、こんな時だからこそ大切だと思っています。

とはいえ急な組織拡大も難しく、「うちの地域にもカタリバを」という声があってもお断りせざるを得ない状態でしたが、カタリバ設立20周年のチャレンジとして、インキュベーションプログラム「ユースセンター起業塾」を始めました。

3年間の助成金提供を行う事業創造コースと、カタリバの現場で働いて起業を目指す研修生コースを設けており、いまは公募の真っ最中です。子どもたちのために動いてくれる地域の仲間を見つけて、その人たちをサポートしていく。現場を自分たちがつくっていくだけではない、そんな新しいチャレンジも2022年はしていきたいと考えています。

カタリバを立ち上げてから20年、未来を自分で創り出す「意欲」と「創造性」を子どもたちに届けることを掲げて活動してきました。

不登校や貧困の子どもの増加はもちろん、東日本大震災やコロナ禍など、この20年で大きな社会の揺れがいくつもありました。いろんな取り組みを迅速に行うことができ、その時その時で最善を尽くせてきたという実感を持てるのは、カタリバの取り組みを日頃から応援してくださるみなさまのおかげです。

新しい時代の教育や子ども支援にお心を寄せてくださるみなさまとともに、すべての子どもに学びを届けていけるよう、次の10年、20年も取り組んでいきます。
引き続きの応援を、どうぞよろしくおねがいします。

Writer

今村 久美 代表理事

79年生まれ。岐阜県出身。慶應義塾大学卒。NPOカタリバ代表理事。ここではゆるくつぶやいていきます。

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