炎上と対話[代表のつぶやき]
「表現の不自由展・その後」の展示を巡り議論が起きた「あいちトリエンナーレ」。
ネットは炎上し、批判や脅しの電話が行政に殺到して話題になった。観覧した私の感想は、嫌いと感じる作品もあり、共感で涙した作品もあった。感想は観た人によって違う。公が一方からの価値観で良い悪いの評価をするのは賛同できない。
炎上させる人はどんな人なのか。裏社会の怖い人を想像した。
「十代も少なくなかった。脅迫というより若者の主張にも聞こえた。よく勉強しているなと感心する子もいた」。炎上に加わった人を取材したジャーナリストから聞いた。彼は取材をいったん止め、表現の自由について議論したそうだ。意見がすれ違う人もいたし、「学校ではこういう話が誰ともできない」と喜んでいるように見えた子もいた。
ネットは子どもと社会の距離を近づけた。昔なら社会に意思表示するには新聞に投稿するくらいしかなかったが、今は簡単に社会に発信できる。問題は、社会はリアルな人がつくるリアルな世界なのに、そのリアルに触れずにネットの情報だけで社会を認識してしまうこと。リアル社会の中での人と人の対話が必要だ。
炎上させるパワーを持った子どもたちの主張を大人が真っ向から受け止め、違う観点で対話する機会があれば、むしろ世の中を変えるパワーに転換できるかもしれない。
(2019年11月21日中日新聞夕刊掲載)