関心の距離感[代表のつぶやき]
台風19号の後、長野の被災地に入り、支援チーム立ち上げのため、しばらく現地に滞在した。
長引くことがわかったのか、六歳の息子は同行を希望した。彼は被災した子どもたちに交ざって遊び、夜はお寺で生活する毎日を気に入った様子だった。私も息子と離れて暮らすより、安心して仕事に打ち込めた。
とはいえ、状況が目まぐるしく変わる現場と、東京に置いてきた他の仕事の処理、被災した子どもの支援と自分の息子の面倒を繰り返しているうちに新聞も読めないまま、二週間がたっていた。
先週、久々に東京の自宅に帰った。世間は被災地よりも、芸人さんの税金の申告漏れの話題で持ちきりに見えた。何だろう。この圧倒的な断絶。すべての人が平等に持つ二十四時間、今も避難生活と先の見えない復旧に奪われている人がいる。ボランティア不足をニュースが叫んでも、多くの人の心には届かない。
一方で、首里城焼失に仕事が手につかないと涙する人がいて、SNSは首里城だらけという人もいた。ただ、私にはリアリティーがなかった。
私たちは、もともと関心があるものにしか思いを寄せない。SNSは欲しい情報しか届かないようになっている。首里城焼失の傍観者である自分と、涙する友人。ここにもまた断絶、関心の距離感を覚えた。
(2019年11月7日中日新聞夕刊掲載)