母親たちの苦労[代表のつぶやき]
「台風のあと、家がぐちゃぐちゃになった。毎日、片付けながらイライラが募るけど、だれにぶつけられるものでもない。かわいいはずの子どもたちの声も、うるさいと感じてしまったことが苦しい」。
まだ若い。二十代にも見える母親Aさんのつぶやきだ。
台風19号の被災地、長野市の一部は、いまだ多くの人が避難生活をしている。学校も被災し、正式な再開まで時間がかかる。今週、やっと他校で間借りして仮再開した。
台風から七日後、私たちは地域の方々とともに子どもの「居場所」を開設した。お寺や体育館でボランティアの方々と子どもを受け入れている。
子どもたちのための活動だけど、個人的にはもう一つ、大きな目的がある。子を持つ母である私は、母親たちの苦労を思うと、他人事とは思えない。子どもの前で毅然とし、気持ちを押し殺しているかもしれない。そんな母親の役に立ちたい。
Aさんはゼロ歳から中学生までのお子さんがいる。夜勤もある夫には家事も頼れない。走りまわる子どもたちを横目に自宅の片付けをする。Aさんは毎日、利用している。
「ここにお兄ちゃんたちの居場所があるから、やっとこの子 (ゼロ歳) を病院に連れて行けるの」と少し笑った。
彼女がもっと自由に、あんなこともあったよねと笑える日が早く来るのを願って。
(2019年10月31日中日新聞夕刊掲載)