大槌町の祭り[代表のつぶやき]
今年も岩手県大槌町の祭りに参加しました。
八百キログラムの神輿が町を練り歩き、お供として何十もの地域団体が大神楽、鹿子踊、虎舞、手踊り、七福神などの郷土芸能を披露して歩きます。浴びるように酒を飲み、見る人は財布から「お花」(ご祝儀)を配り歩いて、クライマックスでは、流れが速くて冷たい川に入り、限界を超えながら、神様が許すまで奉納できない神輿が暴れまわる。私にはこの日の町全体がトランス状態に見えます。
この祭りは、観光客のためではなくて、自分たちのためのもの。復興して変わっていく町を練り歩きながら、ここで亡くなった人々を弔うことも、誰も口にしないけど、この時間が果たしているんだとも感じます。
八百キログラムの神輿を約二十人で担ぐなら、一人当たり四十キログラムを何時間も中腰の姿勢で担ぐということになります。飛び交う言葉は超体育会系。はっきり言って苦行ですが、大震災後に大槌町でNPOカタリバが始めた教育支援のボランティアに参加した方々も、この日は全国から帰ってきます。
ブラック○○とか、××ハラとか、そういう言葉で語るなら、全部当てはまるくらい非合理的な慣習でできあがっているこの祭りの文化。便利なものはあえて使わない。ふだんは合理的に生きたいと思っている私も、なぜ、ひかれるんだろう。不思議な時間でした。
(2019年9月26日中日新聞夕刊掲載)