空の青さを知るー中日新聞コラム「紙つぶて」より[代表のつぶやき]
「井の中の蛙、大海を知らず。されど、空の青さを知る」。島根の高校で過ごした長女から、母親の香織さんのSNSにこんなメッセージが届いた。
品川区在住、フルタイムで働きながら、二人の子育てをするシングルマザーの香織さんの年収は三百六十万円前後。都内で三人で暮らすには裕福とはいえないが、子どもに惨めな思いをさせまいと、高校進学は公立、私立を問わず、本人の希望をかなえたいと考えていた。長女は「海外の高校か、日本なら地方の高校がいい」と言った。帰る田舎もない子が突然、どうして、と驚きつつ、都会の子が移住し、地方の公立高校で学ぶ「地域みらい留学」という選択肢を知り、二人で初めて島根に向かった。
結果、人と山しかない町の素朴な高校を選んだ。スタバもプリクラ機もない町から、他人の家族と囲む食卓や、縁側、祭りなど、楽しげな写真が届く。何でもあるはずの東京にいる香織さんは長女から「人に頼り、お互いさまの人の中で生きる生活」を教えられた。親子にとって帰りたい田舎ができた。
「地域みらい留学」は現在、全国の五十五校が取り組んでいる。今年六月の合同説明会には全国の中学生とその親二千人以上が集まった。気になる本音は―。送り出した親たちと語る会を二十七日に東京・高円寺で開催する。参加希望者は「地域みらい留学」サイトで。
(2019年9月5日中日新聞夕刊掲載)
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