どんな個性も伸ばせるー中日新聞コラム「紙つぶて」より[代表のつぶやき]
社会福祉を学びながら、不登校の子どものためのサードプレイス (家庭でも学校でもない第三の居場所) で活動する廣田悠大くん。彼自身、中学のときのいじめが原因で不登校を経験した。
同級生の暴力に苦しんでも新任の担任教師にはうまく頼れず、発達特性を指摘され、勧められた特別支援学級では、特性に違いのあるクラスメー トの中で孤独を感じた。親との話し合いの末に学校に行かないと決めた彼が出会ったのは、近くの大学が行っていた不登校支援だった。
中学に行けない彼は、大学に居場所を見つけた。
暗記科目は苦手で中学では点が取れないが、大学の倫理や哲学の授業は好きで、「中学生レベルのリポートは受け取らない」と向き合ってくれた教授から学ぶ楽しさを知った。 インターネットを使ったeラーニングの中学の数学で解けない問題を大学生に聞くと「俺もわかんねえ!」と何時間も一緒に考えてくれた。
学生たちに憧れ、自分も大学生になると決め、翌年、中学に復帰した。
彼がいま支援する小中学生は九名。人と話せない子、無気力な子、好きなことだけに没頭し続ける子、多様な個性がある。
現在、不登校は十四万四千人。全員の事情が違う。どんな個性も伸ばせるという未来の当たり前を目指して、彼は目の前の子どもたちと今日も向き合い続ける。
(2019年8月15日中日新聞夕刊掲載)