新しい当たり前ー中日新聞コラム「紙つぶて」より[代表のつぶやき]
先日、ある高校に出向中のNPOカタリバのスタッフが、他校から赴任してきた先生に校舎の外に呼び出された。
「うちの学校の整容指導、厳しすぎて息が詰まる」 と打ち明けられたという。
整容指導とは服装頭髪検査のこと。 前髪が眉毛にかかるなら女子はピン留めし、男子はその週のうちに散髪。男子は後ろ髪が襟足に、横の髪は耳にかかっていないか。 耳の穴の中心線より下の髪はひげ認定されるなど、体育館に並んで確認する。
なるほど生徒のみならず、教員も疑問に感じて いるのなら、誰がそれをしたくて校則が続いているのだろう。
「職員室では変えるべきだという声も多い。しかし、続いてきた慣例を変えるには、相応のプロセスと時間が必要」ということらしい。
「スクール・ウォーズ」世代のような生徒はほとんどいないこの時代、多様性と自発性、当たり前を疑い、変えていく力こそが、これからの時代を生きる子どもたちに求められる。ならば、まずは「校則は民主的な手続きで変えていける」という参画の機会をつくることから始めたい。これこそ、子どもたちと周りの大人たちを変えていく何よりもの教育機会になるのかもしれない。
参院選の十八、十九歳の投票率(選挙区) は3 %と低かった。民主主義に参加する練習としても、自分たちで「新しい当たり前」をつくる機会を子どもたちに届けたい。
(2019年7月25日中日新聞夕刊掲載)