転機ー中日新聞コラム「紙つぶて」より[代表のつぶやき]
一九九八年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立しました。私の転機でした。
それまで 公共は行政が担い、民業は利益を追求するものだと思っていましたが、第三の選択肢ができまし た。民間でも公を担い、ロマンのある仕事ができる。約四年後の大学在学中、女性二人で、のちにNPO法人となる「カタリバ」を起業しました。
私たちはロスジェネ世代。列の最後尾で雑巾がけをした先に、どんな幸せがあるのか見通せず、当時、自分の存在価値に迷う人がたくさんいました。 私のNPO起業も利益追求の企業に対抗したように受け取られ、先輩世代からエゴイスティックな甘えとか、左翼的だと言われました。
大学生が高校に赴き、車座になって高校生と語り合い、進路などを考える教育プログラム「カタリ場」をつくり、運営を始めました。事業が軌道に乗り、自分が一般の初任給程度の給与を得るのに五、六年かかりました。
起業から十八年、十代の若者を社会とつなぐ事業を展開し、今は職員が百四十人。やっとエゴだと言われなくなりました。
自信を持てない十代の問題に取り組む傍ら、震災で家族を失った子ども、貧困・虐待などの課題を抱える家庭で生きる子ども、学校に行きたくても行けない子どもにも出会ってきました。常に解決策は一つではありません。私が見えるものをこれから綴っていきます。
(2019年7月4日中日新聞夕刊掲載)
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