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能登半島地震から半年。被災地で「いま」必要な支援と子ども支援のこれまで

vol.331Report

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category #活動レポート

writer 編集部

カタリバは、2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震で被災した子ども・保護者・学校に向けた支援活動を1月4日より開始しています。(これまでの支援の詳細はこちら

東日本大震災や熊本地震、熱海市伊豆山土砂災害などでの支援経験を活かし、困りごとを聞き、今後起こりうることを一緒に考えながら、「今、子どもたちに必要な支援」を届けてきました。現在もなお、現地や東京での後方支援を行うスタッフが、継続的な支援を行っています

能登半島地震から半年が経った今、カタリバが展開してきた支援と、子どもや子どもを取り巻く被災地の状況の変化についてお伝えしていきます。

避難生活では子どもの居場所が不足。集団避難や受験を控えた中高生への支援も展開

1月1日に発生した令和6年能登半島地震。最大約4万人が避難し、確認された死者は災害関連死を含めて約260人となりました。全壊家屋は約8,000棟で、現在も約2,200人が避難生活を続けています。(*1)

カタリバの災害時子ども支援「sonaeru(ソナエル)」は、発災後の1月3日よりスタッフが現地入りし、子ども支援のニーズ調査を開始しました。

子どもが気づかぬうちにストレスを溜め込むことや、保護者も生活再建や気持ちの整理をする時間が必要となることから、地域の協力を経て1月4日より避難所内に子どもたちが安心・安全に過ごせる居場所「みんなのこども部屋」を開設しました。

また中高生にとっては、学校や塾が再開せず、避難所でも落ち着いて勉強することができない環境が続いていました。そこで「みんなの勉強部屋」として、地域団体と連携して中高生への居場所支援を開始

すると受験を控えた中高生のなかには、被災によって目指していた進路を諦めなくてはいけないと感じている子も少なくないことが分かってきました。

教育委員会にもそのような声が寄せられていたことから、被災によって子どもが進路を諦めることがないために、緊急支援として受験を控えている中学3年生、高校3年生(浪人生含む)に対して、受験にかかる費用に充てられる奨学金の給付を実施しました。

同時期に、輪島市をはじめとする甚大な被害があった地域の中学生が集団避難をするという動きがありました。他にも自宅避難、二次避難など、子どもたちの置かれている環境はさまざまでニーズも多岐にわたる中、現地に色々な支援物資は届いているものの子どもの状況に合った衣類や必要な学用品等が届いていないという声が寄せられました

この状況を鑑みて、連携協定を交わした石川県ならびに珠洲市・輪島市・穴水町・能登町とともに、子ども一人ひとりの状況やニーズに合わせたパーソナライズ物資支援「MY Boxプロジェクト」を開始しました。

これまでに、みんなのこども部屋・勉強部屋は延べ4000人が利用し、約1500人にパーソナライズ物資を届け、約300人が奨学金を利用しました。

学校再開に向けた支援や、被災した先生に対する「支援者支援」も実施

被災した子どもにとって、早く日常を取り戻すことが心のケアになるといわれています。慣れ親しんだ学校で、友達や先生と顔を合わせる日常に戻れるようにと、能登地域の学校では発災から2週間ほどで学校再開に向けた準備がはじまりました。

しかし、避難所に指定されている学校では避難者が教室や体育館で避難生活を送っていました。石川県の例年1月の気温は3〜4度(*2)。学校での避難生活にはストーブ等の暖房器具が必須となり、普段であれば児童・生徒が使用しているストーブを避難者の皆さんのために使っている状況でした。

珠洲市教育委員会のヒアリングによると、いずれの学校も同様の課題を抱えていることから、学校再開に向けた支援として、同市12校の学校にストーブと当面の灯油の提供を実施。同市からは早期の学校再開の後押しになったと後に言葉をいただきました。

学校が再開し、少しずつ子どもたちの日常が取り戻されていきましたが、被災地の学校の先生のなかには、自身も被災し避難所や職員室で生活を送る方がいることが分かりました。また気づけば季節はもうすぐ春、「卒業式に着る礼服もない」という声も聞こえてきました。

そのような、子どものために働き、支援する方に向けた「支援者支援」として、卒業式・始業式に着用する礼服の提供を実施さらに仮設住宅が建設されるまでの間、空き教室を活用した居住スペースの支援を石川県や自治体と協働で実施しました。

創造的な復興に向け、住民が対話する機会づくりを実施。地域の母親達の市民活動を応援する取り組みも

石川県は被災からの復旧・復興にあたり、石川県令和6年能登半島地震復旧・復興アドバイザリーボード会議を設立しました。被災地行政と住民同士の対話のみならず、有識者によるアドバイスを交えながら課題解決と共に創造的復興を目指します。

カタリバでは、代表 今村がアドバイザリーボード会議の委員となったことがきっかけとなり、能登の復旧・復興を考える住民参加型ワークショップ「のと未来トーク」の運営事務局を担うこととなりました。

「のと未来トーク」は「これからの能登をどうしていくかを、そのまちに住む当事者のみんなで考える」対話の場です。被災6市町(輪島市、珠洲市、七尾市、能登町、穴水町、志賀町)および金沢とオンラインの8会場で開催し、総勢451名の住民の方が参加。

この話し合いの成果は、石川県庁やJR金沢駅をはじめ同県内のさまざまな地域で掲示される他、石川県創造的復興プランに活かされています。

一方で「のと未来トーク」に100名以上の住民が参加した輪島市では、現在策定を進めている、復興計画に意見を活かすことを目的に「わじま未来トーク」を開催することとなりました。「わじま未来トーク」は復興プランに対する市民参加、市民によるチャレンジを応援するスキームの構築という2つのゴールを目指します。

カタリバはそれぞれの自治体と連携し「のと未来トーク」「わじま未来トーク」で生まれた子ども支援に関するアイデアの実現に向けた伴走サポートや、市民チャレンジの応援スキームの構築を担います。

この対話会などがきっかけとなり、輪島市の母親達が発案した「こども縁日」には約450名が来場しました。このイベントは「被災した地域でも、子どもにとって楽しかったと思える時間をつくりたい」という母親の思いから生まれ、カタリバが企画実現のためのサポートを行い実現に至りました。

また現在は「まちで唯一の洋服店が閉店し、子どもの夏服が買えない」という課題に対し、母親達がアパレル企業に掛け合い移動販売形式でのバザー開催を目指し、企画を進めています。

震災から半年が経ち、変わりゆく支援のあり方とカタリバが見据える継続的な支援

このように発災直後の急性期は「みんなのこども部屋」を起点に、カタリバが直接子どもや家族の支援を行っていました。そこから先生や学校に対する支援者支援、まちづくりや市民活動を支える伴走サポートなどの間接的な支援に変化してきました。

学校再開や地域の学童や塾が再開したことで日常へと戻ることができた地域から、みんなのこども部屋・勉強部屋は終了。今後も仮設住宅の建設やさまざまな整備が進むなかで、ゆるやかに支援を終了するプロジェクトも生まれていきます。

一般的に災害支援のフェーズとしては、急性期の緊急支援・復旧支援が収束しはじめると、生活再建や新しいまちづくりの仕組みを考える復興支援・自立支援へ移り変わるといわれています。(*3)

カタリバの支援のあり方も変わっていきます。「のと未来トーク」等の住民参加型ワークショップでの対話会の開催や、母親達の市民活動を支援するなど、まちづくりや大人の活動への支援に関して「なぜ、カタリバが?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

これまでの災害支援の経験からカタリバは、被災した地域で安心・安全なまちが取り戻せた時に、子どもがのびのびと育つ環境が生まれ、チャレンジが生まれていくと実感しています。

地域住民や外部の支援者など、さまざまな立場の人が、地域で知恵を出し合い、クリエイティブに「活動する」ことで、行政や公共サービスとは異なるやり方で結果的に地域に活力をもたらし、地域は元気を取り戻せる「活動人口」という考え方があります。

前述の輪島市の母親達の市民活動へのサポートでは、カタリバだけではなく、能登を応援したいと想いを寄せる企業と個人をつなげ、一緒に活動に取り組んだことで活動人口を増やすことにもつながることが分かってきました。

大人の地域や未来のためのプロジェクトの実現により活動人口が増えれば、子どもも自分の可能性を信じることができ、その地域の風土が創造的復興の兆しのひとつとなると信じて、今後も地域の大人や子どもたちのチャレンジに伴走していきます。

さいごに

ここまで、発災から半年間のカタリバの支援についてお伝えしてきました。
被災地で包括的に子ども支援を届けるためには、カタリバだけでは到底実現できません。

石川県と輪島市・珠洲市・穴水町・能登町や地域団体との協力、また能登地域に想いを寄せて賛同してくださった企業やボランティアの皆さま、また多くの皆さまがご寄付をくださったおかげで、子どもとその家族、地域の方々に迅速な支援を届けることができました。

この半年の支援活動を振り返り、改めて皆さまに心からお礼を申し上げます。 カタリバ「sonaeru」プロジェクトでは、能登地域での支援活動を継続していきますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。

「sonaeru」プロジェクトでは、これから夏が本格化するにつれ、全国的に台風による水害被害などが予想されるため、災害に備えて体制を整えています。引き続き、災害時の現地のニーズに合わせ、迅速な子ども支援を届けられるよう努めていきます。

最後に、2024年1月1日に石川県能登地方で発生した地震により、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。また、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

*1  石川県 非常災害対策本部「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」
https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/pdf/r60101notojishin_46.pdf
*2 気象庁 過去の気象データ検索(石川県)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?prec_no=56&block_no=47605&year=&month=&day=&view=
*3 日本災害復興学会論文集「災害においてNPO・NGOが意識すべき支援フェーズモデルの提案」
https://f-gakkai.net/wp-content/uploads/2022/01/ronbun_19_04.pdf

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KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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