130名超のメンバーで考えた“カタリバの強み”とは。カタリバ全社会議2024レポート
カタリバでは年に1回、全国各地で活動しているスタッフが一堂に会する「全社会議」を開催しています。2012年にスタートして以来、事業数が増え組織規模が大きくなっても、年に1回対面で集まって対話することを大切にしてきました。
昨年に続き、対面で開催することができた今年の全社会議。135名のスタッフが集まり、2日間にわたって開催された全社会議の様子をお伝えします。
カタリバの全社会議とは?
現在カタリバには18の事業があります。日々目の前の子どもたちに向き合うスタッフ、学校や自治体の方と一緒に子どもたちを支える仕組みをつくるスタッフ、バックオフィスとして現場の活動を支えるスタッフなど立場はさまざまありますが、年に1度の全社会議では普段と少し視点を変え、組織の未来や目指していきたい社会について議論します。
カタリバの全社会議の全てのコンテンツは、社内メンバーで構成された実行委員によって自前で準備しています。今年も、全社会議開催の2ヶ月前に実行委員会が立ち上がり、全社会議のテーマ決定やテーマに沿った議論を深めるためのワークショップ設計、親睦を深めるためのコンテンツづくり、開催場所や交通手段の手配などを進めてきました。
今年の全社会議のテーマは「3年後、カタリバは何を強みと言える組織になってるか?」。
現在、カタリバのコーポレートサイトには「ナナメの関係という共成長モデル」「10代に伴走する技術と仕組み」「個人の成長を支える強い組織文化」という3つの強みが紹介されていますが、これらの強みを定めてから5年以上が経ち、その間に社会の状況や子どもたちが抱える課題も変化してきました。
「カタリバは、組織の維持よりも子どもたちの変化を生み続ける存在でありたい。子どもたちの変化を生み続けるために、改めてカタリバという組織は何を強みとした組織であるべきなのか。みなさんと議論できればと思います」という代表今村の呼びかけで全社会議のワークショップはスタートしました。
ワークショップに先駆けて行われたアクティビティ。思い切り体を動かして、久しぶり・初めましてのメンバーとの距離も一気に縮まりました
「YOUは何しにカタリバへ」と題した自己紹介タイムも
「カタリバらしいやり方」で、
カタリバの強みを紡ぎ出す
カタリバの強みを考えるワークは、異なる事業に携わるメンバーで編成された5人1組の「ホームグループ」を中心に行われました。はじめに、各人が事前課題として取り組んだ「自分の仕事から振り返る『個』や『チーム』の強みや苦手」の共有からスタート。メンバーそれぞれの立場から見た、強みや苦手が語られました。
事前課題としてもう一つ用意されていたのは、「インスパイアセッション」の視聴です。
今村とディレクター・菅野による「日本の教育変遷とカタリバの歩み」と、今村と常務理事・鶴賀による「NPO・ソーシャルセクターの変遷」をテーマにした動画を、参加者が事前に視聴して、社会の潮流や教育の歴史・カタリバの歴史を知ったうえで、全社会議当日はこれからのこと(カタリバの3年後の強み)に思考を広げていきました。
カタリバでは「対話」という文化を大切にしてきていますが、それは全社会議でも同じです。今回の全社会議ではインスパイアセッションを事前に視聴し、議論に必要な知識をインプットすることでメンバー間の共通言語をつくり、カタリバでの社歴や教育分野への知見に関わらずフラットに対話できる場をめざしました。
また、2日間のコンテンツのなかでは、ホームグループ以外のメンバーと対話する時間も用意されました。時にはホームグループでの議論に不足している視点や、相対する考え方に出会うことも。それらをホームグループに持ち帰り、内容を深めていきました。
「社歴が長い人/短い人」「他セクターからソーシャルセクターに転職した人」「教育機会・支援を受けた側からカタリバに参画した人」など8つのテーマで括られたメンバーが、原体験や違和感など感じていることを語り合ったトークセッション
複数のホームグループが集まった混合グループでのワーク
私たちの考えるカタリバの強み
2日間の議論の末、各グループから発表された「カタリバの強み」の一部をご紹介します。
- ・現場の課題や想いを、自分たちのものだけにしない巻き込み力
- ・現場から生まれた熱量を、対話を通して次の現場につなげる
- ・思いのある個人や組織に伴走し、社会への問いを共創する
- ・子どもを取り巻く多様な課題に旗を立て、包括的にアプローチできること
- ・ナナメの関係の総量を増やすために、本気フィールドを展開する場づくり
- ・教育のあらゆる担い手の「やってみたい」を引き出す伴走
- ・社会を巻き込むために、すべての人がアジェンダセッティングできる組織
- ・熱を伝播するシステム
- ・アマチュア性と専門性
全社会議の終盤には、この全社会議で得たことをどのように自分の仕事に生かしていきたいか、一人ひとりがホームグループで発表しました。最後は、「自分たちがアジェンダ設定したことに、人々を巻き込んでいくことがNPOの役割。担い手や対話を増やしていくために、各事業が人々を社会課題に巻き込むための“関わりしろ”をつくっていこう」という今村のメッセージで締めくくられました。
翌週には、全社会議への参加が叶わなかったメンバー向けの半日間のプログラムも開催され、こちらでもカタリバの強みについて議論を交わしました。
●事後アンケートに寄せられた声(抜粋)
・ホームグループごとに提案されたカタリバの強みが、別々のグループ・事業ごとに考えたはずなのに、重なるポイントがたくさんあった
・普段は自分の所属する事業部の人としか関わらないが、もっと広いカタリバという組織の中の一人なのだということを実感した
・「対話」とはお互いを理解するためのものであるということをあらためて認識した
・同質性の高い組織だと思う場面もあり、それは最大の強みであると同時に弱みでもあるので、意識して機会を作っていきたい
今後は全社会議での議論をもとに、「カタリバの強み」の最新版を策定していく予定です。準備ができましたら、こちらのホームページなどでもお伝えさせてください。
最後に、今回の全社会議は石川県加賀市の「みやびの宿 加賀百万石」で開催しました。
能登半島地震を受けカタリバでは被災地の子ども支援に取り組んでいますが、発災直後から二次避難者を受け入れていた加賀百万石は、「子どもの居場所」を開設するための場所をいち早く提供してくださった施設でもありました。
さらに石川県では、加賀市のように地震の被害が比較的少なかった地域についても観光客の往来が減っており、私たちにできることは何かと考えて加賀市での開催に至りました。
全社会議前日には約40人のスタッフが、能登半島の被災地にてボランティア活動にも参加させていただきました。
100名規模での全社会議開催にあたり、さまざまな面で手厚くサポートいただいた加賀百万石の皆さま、ボランティア活動を受け入れてくださった被災地の皆さまに改めて感謝いたします。本当にありがとうございました。
本田 詩織 カタリバマガジン編集担当
1990年生まれ。 地方で育った経験から、学生時代より地域の魅力や課題を教育に繋げる取り組みに関心を持つ。民間企業2社を経て、2018年よりカタリバに参画。福島県立ふたば未来学園高等学校併設の「コラボスクール・双葉みらいラボ」で学校支援コーディネーターとして勤務したのち、現在は広報部でオウンドメディアの運営を担当する。
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