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「オンラインでも友達って見つかるんだ!」小規模校をつなぐ、学校横断型探究プロジェクト活動レポートvol.3 -実践校の高校生に話を聞きました-

vol.233Report

date

category #活動レポート

writer 吉田 愛美

1校あたりの生徒数が少ない学校、いわゆる「小規模校」は、日本全国に約700校(※)あると言われています。

2022年4月より高等学校の新学習指導要領に基づき必修化される「総合的な探究の時間」では、「生徒一人一人の興味関心に応じた、個別最適な学び」を重視していますが、小規模校では、指導にあたる教員の数が少ないなど、「個別最適な学び」を実現するためのリソースが不足している現状もあります。

カタリバが2020年度からスタートした「学校横断型探究プロジェクト」は、総合的な探究の時間における「個別化」に困難を抱える小規模校において、学校同士がつながることを通じて、幅広い興味・関心からはじまる探究の学びを支援し、高校生たちの主体的な探究に伴走する試みです。

これまでの連載では、プロジェクトの概要実践校の先生の声をお届けしてきました。3回目となる今回は、今年度から本プロジェクトに参加している熊本県立小国高等学校(以下、小国高校)の生徒である小田さん、河津さんのお二人に話を聞きます。「小規模校」での高校生活や、プロジェクトに参加してみての感想を伺いました。

(※)「令和2年度 学校基本調査」(文部科学省) より。「約700校」は、1校あたりの学級数が9以下の学校を小規模校と仮定した場合の、全日制公立高校の数です。

同級生の3割が幼なじみ。小規模校ならではの安心感

  • ーーお二人が育ったまちについて教えてください。

小田さん:小国高校のある小国町の隣にある、南小国町の出身です。黒川温泉やそば街道が有名な町なんですが、町内には高校がないので、小国高校に来る生徒が多いです。

河津さん:実は私たちは保育園からの幼なじみで。とはいっても、小国高校に入学する中学校が3校ほどしかないので、小国高校ではよくあることです。

私がこれまで通っていた小学校や中学校も、1学年30人くらいの小規模校でした。クラス替えもそれまでしたことがなくて、高校になって初めてクラスが分かれる経験をしたので新鮮でした。

インタビューに応じる小田さん(左)と河津さん(右)。プロジェクトを担当する後藤先生(中央)も同席してくださった

ーーいくつかの選択肢があるなかで、なぜ小国高校を選んだのでしょうか。

小田さん:高校受験をするタイミングでは、「高校でこれがしたい」という明確な目標がまだなくて。(熊本)市内の高校に行くという選択肢もあったんですが、自宅から通うことはできないので寮に入ることになるんです。経験したことがない寮生活には不安もあったので、地元に近い高校がよいと思って選びました。知り合いが多いので、すぐに馴染めるのもいいなと思って。同級生の3割くらいは中学校からの顔見知りです。

河津さん:私も当時は将来のことをまだ迷っていて。町外の高校も考えましたが、結果的には小国高校に来てよかったなと思っています。みんな仲が良くて楽しいです。

ーー小規模校ならではの良さや大変さを感じることはありますか。

河津さん:小規模じゃない高校の話って中学校までの友だちから聞いた話から比較するしかなくて、どんな感じなのか正直わからないところもあるんですが、スポーツ大会で出られる競技数が多いこととかですかね。小規模校はなんでも役割が多いです。あらゆる係も、兼任が普通。掃除もさぼっていたらばれちゃいます(笑)でもそれが嫌だとは思っていないです。

小田さん:他校の文化祭を見に行った時に、盛り上がりが違うなと思ったことはあります。そういうのを羨ましく感じたりもします。

でも小国高校では生徒がみんな顔見知りで、喋ったことのない人なんていないので、安心感はあります。同じ中学校の先輩も多くて、高校入学前からどんな高校なのかを聞けたりもしました。入学してからも「試験ってどんな感じ?」とか、情報収集ができるのはいいなと思っています。

それに、先生が一人一人を見てくれている感じがしています。友達同士でも気づかないことに気づいてもらえることも多いなと思っていて。的を射たことを言われることも多いです(笑)

生まれたまち、高校のまち。比較して見つけた探究テーマ

ーーお二人はいま、どんな探究に取り組んでいますか。

小田さん:僕はふるさと納税について調べています。地元である南小国町はふるさと納税で成功していて税収額も高いのですが、高校のある小国町は隣町なのにその半分くらいなんです。コロナ禍でさらにピンチを迎えていることもあって、どうにかできないかと思い目をつけました。

河津さん:私はマルシェに興味があって、そのことを探究しています。自分でも企画してみたいなと思っているので、どういう流れで企画していくのかを教えてもらうために、南小国町で行われているマルシェの仕掛け人がいる会社で、インターンシップも経験しました。

インターンシップに取り組む河津さん(右)

小さい頃、南小国町で開催されているマルシェによく足を運んでいた思い出があるんですよね。地元の小さなお店が集まって、お店の人とお客さんが近い距離で交流しているのがとても好きだったんです。お客さん側で参加していた当時は楽しいなと思うくらいでしたが、高校に入って探究という時間があったことで、この機会を利用して自分自身でもマルシェをやってみよう!と思いました。

ーー探究を進める中で悩んだり迷ったことはありますか。

河津さん:マルシェを実際にやってみたいと思っているんですが、企画を実現するためにはお金だったり場所だったりが必要で…。インターンシップに行った会社の方にも相談をしているところです。

小田さん:僕は、なかなか探究テーマが決まらなくて悩んでいたことがありました。今振り返ると、何を目的に探究活動をするのかという部分があまり見えていなかったんだと思います。

そんななかで、他校の同級生からいろんなアドバイスをもらえたことはとても良かったと思っています。

進めている探究について、同級生からアドバイスをもらう様子

オンラインでも友だちはつくれる。
プロジェクトで出会った仲間

ーー合同授業に参加してみていかがですか。

河津さん:最初の授業で司会を務めました。みんなが喋ってくれるかどうか不安だったけれど、反応をくれたのでやりやすかったです。他にも、私が発言したことに対して「いいね!」と言ってくれたり、アドバイスをしてくれたりして、励まされています。

あとは、オンラインでも友だちはつくれるんだということも学びました。アイスブレイクを通して場を温めたり、相づちや拍手で盛り上げたり。工夫をすればオンラインでのコミュニケーションもここまでできるんだなと思いましたね。

次で最後というのが寂しいくらいです。(他校とオンラインでつないだ授業は3ヶ月に1回程度でしたが、)月1くらいでやれたらいいのにと思います。

初回授業で司会をする河津さん(右)

小田さん:純粋に楽しいです。最初にグループでの進行役になった時は、盛り上がらなかったらどうしよう、という気持ちもありました。でもいざ始まってみたら平気で。1回目の授業でやってみたことを活かして2回目の授業でも、お互いをニックネームで呼び合ってみたりもしました。

ーー2回目の授業は大学生や社会人のゲストによる講演会でしたが、いかがでしたか。

河津さん:ゲストの方がどんなキャリアを歩んで来られたのかを聞いたのですが、自分の意志を優先して仕事を選ぶ道もあるんだなと感じました。将来のことをちょうど考えているところなので、発見が多かったです。

小田さん:ゲストに大学生がいたことを今知りました。あまりにも大人だったので…(笑)

自営業で会社を立ち上げた方のお話も聞きました。会社を立ち上げるって夢があるし、僕としても興味があったのですが、リアルな苦労話を聞いて大変さを知りました。

ーー3回目の授業では近しい探究テーマを持つ生徒と、その領域に知見を持つ先生とで組み合わせた「ゼミ」形式で進行しましたが、どうでしたか。

河津さん:ゼミでは、私と同じようにイベントをしてみたいと考えている高校生とも一緒になったのですが、カフェを開こうと計画している高校生に、勇気を出して休み時間に話しかけてみたらかなり話が盛り上がり嬉しかったです。

友だちのゼミでは、授業の後もLINEグループ(ゼミごとに作成したオープンチャット)で山形の先生を交え、探究の相談などで盛り上がったと聞きました。

3回目の授業「探究ゼミ」では、3校の先生方が学校混合で構成した「ゼミ」のファシリテーターを担当した

ーー全3回の授業を振り返って、印象に残っていることはありますか。

小田さん:みんなに発表を聞いてもらう場面で、「テーマ設定に対するアドバイスが欲しい」と自分から伝えたら、それに対しての意見を色々ともらえたことが印象に残っています。発信して終わりではなく、自分からアドバイスを求めたことで色んな観点をもらえたんじゃないかと思います。

河津さん:色んな人の探究活動を聞いたなかで、一つのきっかけが大きなことにつながるということを学びました。カフェをやろうとしている他校の生徒の話も「まずは小さく始めていいんだ」と思えるきっかけになりましたね。ゲストの話も、前に進むヒントになったと思います。

高校3年生、その先。これからも探究は続いていく。

ーー今後の探究ではどんなことをしてみたいですか。

河津さん:マルシェを高校生のうちに実施するのが一つの目標です。人と人がつながり合えるような場をつくりたいなと思っています。

小田さん:ゲストを招いた授業回でEコマースについて話を聞いたのですが、そこで習った「売れる商品の見せ方」を、ふるさと納税というテーマでも考えていこうと思っているところです。ちょうど簿記の勉強を始めたので、その知識も活用して「もっと利益を大きくしていくことはできないのか?」を考えられると良いなと。

ーー今後のキャリアについて、今考えていることを教えてください。

小田さん:今、簿記の勉強が楽しくて。2級を取って、就職につなげることがまずは目標です。もっと夢を大きくするなら、公認会計士を目指すのもありかなと思っています。

河津さん:私は美容の専門学校に行こうかなと考えているところです。まだ意志を固められていないけど、高校受験の時にも悩んでいたこの問いに向き合いたいと思っています。

ーーキャリアを考えるうえで、今回のプログラムが影響しそうな部分はありますか。

小田さん:普段関わらない人からアドバイスをもらうことはいい経験だったし、人とつながることの重要性が身に染みました。今日インタビューしていただいたことでも、また振り返りができた気がします(笑)

河津さん:友達をつくりたいと思って休憩時間に話しかけてみたり、恥ずかしさもあったけど司会をやってみたらみんなが受け止めてくれたり。こういう経験をしたことで、私ってこんなに友達をつくりたいんだ、人と話すことが好きなんだ、という発見があった気がしています。

ーー小田さん、河津さん、ありがとうございました。


 

「学校横断型探究プロジェクト」では2022年2月22日(火)に、本年度の取り組みをお伝えするオンライン報告会を開催します。ゲストに元文部科学副大臣の鈴木寛さんをお招きし、プロジェクト参加校の先生方も交えたトークセッションなども予定しています。

この取り組みにご興味がおありの方は、下記申し込みフォームよりぜひお申し込みください。

探究×学校間連携による個別最適化された学びを考える
〜学校横断型探究プロジェクト報告&トークセッション〜

■日 時:2月22日(火)19:30〜21:00
■参加費:無料
■場 所:web会議システム「Zoom」
■参加方法:申し込みをいただいた方へ参加用ZoomのURLをお送りします
■内 容:
・2021年度 学校横断型探究プロジェクト参加校の先生による取り組み紹介
・ゲストと参加校の先生によるトークセッション
―テーマ「探究学習における学校間連携の価値とは?」
■ゲスト:鈴木寛さん(元文部科学副大臣、東京大学公共政策大学院 慶應義塾大学 教授 など)
■参加申し込みフォーム:
https://forms.gle/28fBiLt79GcmBSH27
*回答締切:2月21日(月)

Writer

吉田 愛美 ユースセンター起業塾

1991年福島県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。地元の力になりたいと、転職を経て地元選出の国会議員秘書を勤めた後、2016年1月より現職。コラボ・スクール大槌臨学舎で広報・事務・教務(中学校)を担当した後に、全国高校生マイプロジェクト事務局にて学校支援や広報を担当。現在は、「ユースセンター起業塾」事業責任者として、10代のための居場所を立ち上げたいという団体や個人を支援している。

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