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「校則・ルールは誰のもの?」みんなのルールメイキング活動レポートvol.1

vol.163Report

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category #活動レポート

writer 編集部

昨今、「校則」についてのニュースを目にする機会が増えてきました。頭髪に関する校則「ツーブロックの禁止」など、生徒の学校生活に大きな影響を与える校則やルールについて、違和感の声が上がり、大きな話題になっています。しかし、校則・ルールへの関心が高まり、変化への声が多く上がっても、校則・ルールを実際に変えていくことへのハードルは高く、“変わらない”校則・ルールは学校の当たり前として存在しています。

一方で、校則・ルールの緩和の動きも同時に起こっています。3月には佐賀県教育委員会が県立高校に校則の見直しを求める通知を出しました。6月には文部科学省は中学生が学校に携帯電話を持ち込むことを条件付きで認めることを検討し、その際、学校側と生徒、保護者が合意した上でのルール作りを求めました。「変わらない」と思っていた校則・ルールに変化が生まれてきました。

校則・ルールは一体誰のものなのでしょうか。そして学校は誰のものでしょうか。そのような問いを改めて見つめ直すタイミングが来ています。

そこでカタリバは、学校の校則・ルールに焦点をあて、生徒・先生・保護者などが対話と調査を重ね、見直し、納得解をつくることを通して学ぶ「ルールメイカー育成プロジェクト」を昨年、立ち上げました。本事業は経済産業省「未来の教室実証事業」に選ばれ実施しています。

本稿では、『みんなのルールメイキング』と題して、5回に分けてこのプロジェクトの取り組みをレポートしながら、新しい校則・ルールづくりについて考えていきます。

校則・ルールの見直しを
通して民主主義を学ぶ

学校の校則・ルールは、生徒にとって、日々の学校生活を形作る重要な基盤です。そのため、その見直しの議論には、教職員や保護者・地域住民といった大人だけでなく、生徒も当事者として参加できることが大切です。

校則・ルールの見直しに生徒が参加する機会や仕組みは、日本ではまだ一般的ではありませんが、諸外国では積極的に作られています。これらの国では、校則・ルールの見直しについてどのような価値があると考えられているのでしょうか。

学校の校則・ルールの見直しに関する諸外国の動きについて、シティズンシップ教育の専門家である古田雄一さんに話を聞きました。古田さんは、本事業にパートナーとして参画し、プログラムの設計や効果測定・検証などに協力していただいています。

古田さん:「生徒にとって学校は一つの小さな社会であり、学校生活は、生きた民主主義を学ぶことができる場所でもあります。こうした考え方は、世界の様々な国で大切にされています。

例えば、若者の投票率の高さで知られるスウェーデンでは、学校庁の学習指導要領に『スウェーデンの学校は、民主主義の原則に基づく』と記され、学校生活全般にわたり、生徒の意見を反映する機会が設けられています(注1)。フランスやドイツなどにも、生徒が学校運営に参加できる仕組みがあります。また、アメリカ・シカゴでは、有志の生徒が中心となって学校の改善や問題解決に取り組むプログラムが導入されており、全校生徒や教職員など様々な人の意見を聴きながら、生徒たちがより良い学校づくりに取り組んでいます(注2) 」

古田雄一 大阪国際大学短期大学部ライフデザイン総合学科准教授 東京大学大学院教育学研究科修士課程、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門はシティズンシップ教育、学校経営学。日本シティズンシップ教育フォーラム代表やシチズンシップ共育企画フェロー等、様々な社会貢献活動に取り組む。ルールメイカー育成プロジェクトにパートナーとして参画。

古田さん:「近年、日本の中高生の多くが『自分が参加することで社会を変えられる』という感覚を持てずにいることが、数々の調査で明らかになっています。それは、日々の生活の中で『自分たちの手で何かを変える』という経験ができずにいることと、決して無関係ではないと思われます。

だからこそ、生徒が様々な意見と出会いながら、自分たちの学校の問題を解決したり、ルール作りに携わったりすることは、これからの民主主義社会を作っていく主権者や市民として大切な経験であり、こうした取り組みの充実が求められます。また学校にとっても、生徒が議論に参加できる機会や仕組みを作り、生徒目線でこそ気づく問題や意見を採り入れていくことで、より良い学校づくりにもつながるのではないでしょうか」

未来の教室
ルールメイカー
育成プロジェクト

カタリバは、学校の校則やルールを⾒直す、当事者(⽣徒・教員・保護者)の声を反映する機会や仕組みをつくることを、広島県にある私立安田女子中学高等学校を最初のモデル校として、取り組みを開始。

同時に、誰もが校則・ルールの見直しに取り組めるようなプログラム開発も行い、生徒が課題発⾒・合意形成・意思決定をする⼒(市⺠性=シティズンシップ)を高めることができる探究的な学びのプログラムを目指しています。

具体的には、生徒が主体となって、周りの意見も聴きながら見直したいルールを決め、学校内外での調査や議論を重ね、新しいルールや解決策を考え、実際に実践・運用してみて振り返る、といった流れを大切にしてプログラムを作っています。

一連のプロセスを通じて、生徒自身が「ルールとは何か?」「多様な立場の意見を聞き、協働し、納得解をつくるには?」という問いに自分たちなりの解を持てる状態になっていく。そして、生徒にとって一番身近な社会である学校を変えた経験から、自分たちの社会は自分たちで変えられるという確かな手応えを得られることを願っています。

モデル校・安田女子中学高等学校では、全校から20名の有志生徒が集まり学年を越えたプロジェクトチームを結成して、校則・ルールの見直しに向けて動き出しています。参加する生徒は、プロジェクトの意気込みについて次のように話してくれました。

生徒A:「学校の校則・ルールは、厳しさでもあり、安田らしさでもあると感じています。みんなで変えていくことが”新たな安田らしさ”になるのかなと思い、”新しく変わる安田”に関われることが誇らしいと思っています。プロジェクトチームに入っていない生徒が、”気づいてたら決まっていた”という状態は作らないようにしたいです。自分たちが参加しながら学校が変わっていくことを共有しながら進めていきたいです」

生徒B:「小さい頃から委員長などをやってきました。安田に入っても『なんでこれは変えられないの?』とみんなから質問された時に”決まりだから”という返しが自分自身多く、その返事は自分にとってイヤなことだと感じていました。プロジェクトで取り組みをはじめて、人生の中で一番”成長”を感じています」

このような校則・ルールを題材にした探究的な学びが全国に広がり、学校の当たり前を変革するとともに、生徒ひとり一人が民主主義社会の当事者として育つ土壌が生まれるよう、取り組んでいきます。

みんなのルールメイキングvol.2では、本事業アドバイザーである教育社会学者・内田良さんに生徒参加による校則・ルールの見直しの意義についてお話を聞きます。

(注1)川崎一彦ほか『みんなの教育 スウェーデンの「人を育てる」国家戦略』
(注2)古田雄一「世界の実践に学ぶ 生徒参加の主権者教育 第4回」『月刊高校教育』2020年7月号

文=山本晃史


 

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編集部 編集部

KATARIBAMagazine編集部が担当した記事です。

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