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思春期の実態把握調査より~スマホ世代の悩みと孤独、カタリバができること

vol.035Mail Magazine

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category #メルマガ

writer 上村 彰子

昨年カタリバは、マーケティングリサーチ企業・株式会社マクロミルと協働で「思春期の実態把握調査」を実施しました。この調査は、同社が行っている社会貢献活動「Goodmill」の取り組みのひとつ「NPO向けリサーチ支援活動」の第1弾として、ご支援いただいたものです。

調査目的は、現在の思春期世代の実態、および思春期世代を取り巻く環境について知ることでした。浮き彫りになったのは、スマホやSNSに依存しながらも自分たちでは解決しきれない孤独を抱えた高校生たちの姿。そして子どもたちへの対応の不十分さを感じている、先生たちや保護者たちの本音でした。

カタリバは、貧困や被災など、様々な問題を抱える子どもたちのために活動をしています。今回の調査は、どのような形で思春期世代の子どもたちに寄り添い、サポートをしていくかについて考えるヒントとなりました。カタリバが悩める子どもたちにできることについて、調査結果のご紹介と共にお伝えしたいと思います。

 

190207-2.jpg (西日本豪雨の避難所でも、スマホを手放さない子どもたち)

 

まず調査結果から、10代の7割以上が、SNSや動画共有サービス等のネット情報に毎日接触していることがわかりました。特に利用頻度が多いのがSNS。1日1回以上利用している10代は、約9割に上ります(グラフ1)。

現代はスマホさえあれば、自分が実際にいる空間は関係なく楽しむことができます。学校でも実際に教室にいる先生や友達より、遠い場所にいるオンライン上で会った友達とコミュニケーションする時間が長い10代も多くなっています。

カタリバが西日本豪雨の後訪れた避難所でも、スマホのサービスにハマっている子どもたちを目にしました。心は不安定になっており、行動が制限される状況の中、寝る時間以外スマホを手放しません。「もう18時間くらい使ってる」と話す中学生もいました。

 

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グラフ1【思春期の接触情報と接触頻度】

 

10代のコミュニケーションにおいて、スマホやSNSが前提となっている状況がうかがえますが、弊害も出てきています。今回の調査では、 高校生世代の5人に1人が「SNSいじめ」を経験していることがわかりました。

SNSを3時間以上利用しているとその経験率はさらに上がり、3人にひとり。SNS接触時間が多いほどトラブルに巻き込まれやすいとも言えます(グラフ2)。しかしSNSいじめにあっても、その4割は何も対処できていません。

 

190207-2-2.jpgグラフ2【SNSいじめ被害経験とSNS接触時間の関係】

 

10代がSNSに浸っているというのは、スマホの中の自分と同質性の高いコミュニティにいるのが楽だというのも一因です。テクノロジーの進化は、子どもたちの世界を広げる可能性がある一方で、「同質なもの」とつながることを容易にしました。同質性が高まると、異質なものを排他しようという考えに陥りやすく、攻撃性につながる可能性も。

それも「SNSいじめ」の背景のひとつではないでしょうか。ひと世代前に比べ、自分と異なる意見の人とぶつかる経験や、異世代と深く関わる機会が減少していることは心配です。

また今回調査した10代の約9割が、悩みを持っているということがわかりました。悩みの多くは、自分の能力や将来、身体的特徴に関することですが、約4割は「漠然と感じる生きづらさや息苦しさについて」悩んでいます(グラフ3)。

けれどもそんな悩みを持つ7割の10代は、誰にも相談していません。常にネットにつながり、色々な人ともコミュニケーションをとっているはずなのに、悩みを相談する相手がいないというのが現実なようです。

 

190207-3-2.jpgグラフ3【悩み実態】

 

10代の子どもたちには根本的には、「つながりたい、満たされたい、寂しい」という欲求があり、スマホは的確にその欲求にマッチしています。今回の調査では、SNSで誰かとつながっていても10代の心は満たされておらず、漠然とした不安に囚われていることが明らかになりました。

悩み多き彼らに、カタリバができること。それは、学校外の少し年上の人々との関係作りを進めることだと考えています。10代にとって、自分たちが属している世界での人間関係の悩みやトラブルは、とても深刻なことでしょう。けれども、そんな悩み多き思春期を経験済みの年上は、社会の常識や大きな視点からアドバイスをしてあげることができます。カタリバは10代と少し年上の大人とのそんな関係を、「ナナメの関係」と呼んでいます。

カタリバは2001年の設立以来、この「ナナメの関係」を活用した事業に取り組んでいます。

例えば、2011年の東日本大震災をきっかけに始めた「コラボ・スクール」。そこでは、若い大学生ボランティアが、被災した子どもたちの個別の学習指導や相談にあたっています。このような被災地のコラボ・スクールでは、身近な大人との触れ合いが、子どもたちの心のケア機能も果たしてきました。友達でも、利害関係のある親でも先生でもない、少し年上の先輩になら、被災の悩みや本音を語りやすい。「自分の話を聞いてもらえた」という体験や、「こんな大人になりたい!」という憧れとの出会いが、10代が将来に踏み出す力を生み出しました。

 

190207-9.jpg(地域の大人と10代が語り合うカタリ場。島根県益田市の公式YouTubeより)

 

また現在カタリバでは、島根県益田市役所にスタッフを1名出向し、「ナナメの関係で地域の関係性を紡ぎ直す」事業も実行しています。そこで実施しているプログラムは、「カタリ場」。それは、「語り合う場」を通して、子どもたちがキャリアを学ぶ授業です。益田市の重要施策のひとつとして「カタリ場」が、ほとんどの小中高校(30校中25校)で行われています。

益田市の「カタリ場」は、子どもたちのキャリア教育の一環という形を借りつつ、実は、地域に生きる子ども・大人・先生方などが「ちょっとした知り合い」を作るためのきっかけ作りになっています。参加した中高生からは

「普段、大人と話し合う機会はあまりなくて貴重な体験」

「たまたまカタリ場でお隣さんと話した。家が隣り同士でも、実はあまりお互いのことって知らないものなんだって気づいた」

という声も聞きました。プログラム後に「地域に相談できる人がいるか」と聞くと、約8割の子どもたちが「いる」と答えるようになりました。

10代が悩みを解決していくには、スマホの中の同質性にばかり依存せず、異質な人々と交流し、リアルに相談や話しができることが大切なのではないでしょうか。そのためにもカタリバは、学校と地域社会をつないでいくことで、10代の悩みにアプローチしていきます。

ネットは便利で楽しいけどそれだけではない、「リアルな世界やコミュニケーションには、もっと楽しいものがある」ということを、今後の活動の中でも提案していきます。

あらゆる環境にある子どもたちに学びの場を届け続けられるよう、あなたの力を貸してください。毎月1,000円で継続的に寄付してくださる「サポーター」を募集しています。「1日33円で子どもたちにチャンスを」。

詳しくはこちらからご覧ください。

Writer

上村 彰子 ライター

東京都出身。2006年よりフリーランスでライター・翻訳業。人物インタビューや企業マーケティング・コピーライティング、音楽・映画関連の翻訳業務に携わる。現在、カタリバ発行のメルマガや各種コンテンツライティングを担当。

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