1月13日、宮城県女川町で成人式が行われました。カタリバはこの町で、2011年から被災地の子どもたちのための放課後学校、コラボ・スクール女川向学館を運営してきました。
今年の新成人は、2011年3月11日のときには小学6年生だった世代です。そのなかには、女川向学館の卒業生もいます。今回は、津波の到達地点に「女川いのちの石碑」を建てるなど、震災の教訓を未来に伝える「女川1000年後の命を守る会」のメンバーとしても活動を続ける2人の新成人を紹介します。
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(中学時代の2人)
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彼らは、小学6年生の3月に震災を経験しました。入学する中学校の体育館は天井が崩れ落ちてしまったので、入学式は学校の図書室で行われました。
揃えたばかりの新しい制服は津波で流され、ほとんどの生徒が私服で出席しました。図書室に入れなかった在校生の先輩たちは、「新入生だけでは校歌斉唱ができない」と考え、廊下で校歌を歌ってくれました。
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(震災当時の女川町) |
中学校の授業では、震災に向き合うことが多くありました。国語の「自分の気持ちを俳句にする」という授業では、震災を体験して生まれた気持ちを言葉にしました。社会の「身近な地域について調べよう」という授業では、自分たちの生まれ育った町に起こった災害と防災について、みんなで考えて話し合いました。
こうしたことから、彼らは学校を飛び出し、町を巻き込んだ防災活動を始めました。町にあるすべての浜の津波の到達地点に「ここよりも高いところに逃げて」と呼びかける石碑を建て、避難しやすい町づくりを提案し、さらに緊急時に連携がとれるよう、日頃から町民同士の絆をつくることを提唱する取り組みです。
この活動は成人を迎えた今も続けています。全国から講演依頼を受けることも多い彼らは、こう語ります。
「3.11の体験は無駄にならない。すごくつらいことに変わりないけれど、未来のための気づきへと繋げていける。生かされた自分たちの命を、次の命を守るために使いたい」
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(生徒会にも部活にも励んだ中学時代)
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1人目の新成人は今、東京の大学で学んでいます。中学時代は人前で話すのが好きで、生徒会長を務めました。女川向学館には、部活が終わった中学3年生の夏から、受験勉強をする場所を求めて通い始めました。当時暮らしていた仮設住宅では、5人家族で3部屋を使っていました。
「家族は仲が良かったので、にぎやかで楽しかった。でも冬は家のなかもとても寒くて、髪を洗って乾かさないとパリパリに凍るんです。それに狭いから、兄弟がいるとつい遊んじゃって、なかなか勉強できなかったですね」
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(恩師である佐藤敏郎先生と)
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女川向学館で学校の授業でわからなかったことを質問し、わかるようになると、成績がかなり伸びたと言います。一人で勉強するのは心細いけれど、ここに来れば誰かがいる。一緒に頑張る仲間がいることが、勉強への意欲につながりました。
勉強だけでなく、マイプロジェクトでの挑戦や進路についてスタッフに相談するうちに、「こういうことがやってみたい」「こういう人になりたい」という自分の考えが生まれてきました。今、大学では人間科学を学んでいます。
「向学館があったから今の自分があるんだと感じています」
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(中学時代はバスケットボール部でした)
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2人目の新成人は、仙台の大学に進学しました。彼が女川向学館に通い始めたのも、中学生の頃です。 女川町では17時に閉まるお店がほとんどで、「学校が終わると向学館に行く」というのが日課になりました。今日学校であったこと、最近の楽しいこと、体育祭のことなどいろいろなおしゃべりをしました。たまに、悩みや将来について相談することもありました。
「普段、友だちや学校の先生には話そうと思わないことも、向学館では話せました」
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(カタリバ代表・今村久美と)
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彼は、特に中学3年生のときに女川向学館で過ごした時間が「すごく楽しかった」とうれしそうに話します。
「普段は一緒にふざけて遊んでいるけど、勉強になると真剣に頑張る友だちが多かった。『お、その問題できてる!すごいじゃん』とか言い合って、みんなに負けないように自分も頑張ろうと思えた。ただ遊んだりリラックスしたりするだけじゃなくて、仲間と切磋琢磨して勉強できることがワクワクして、心地よかった。あのときのあの場所が心から好きでした」
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(中学時代の2人と女川町の同級生たち)
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現在は大学で、経営やコミュニケーションについて学んでいます。卒業後のことはまだ決めていませんが、記者のような何かを伝える仕事に興味を抱いています。
「現地でないとわからないことを取材し、人に伝えていきたいんです」
成人を迎えた彼らの姿は頼もしく、輝いて見えました。どんな環境に生まれ育っても、未来を描ける社会を目指して。カタリバはこれからも、環境の変化や困難に直面する子どもたちに寄り添い、共に歩き続けていきます。
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