新年明けましておめでとうございます。NPOカタリバ代表理事の今村久美です。
昨年は、異常気象が多発し、全国各地で大規模な自然災害が相次いで発生しました。各地で被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
さてカタリバでは、東北や熊本の被災地で活動してきた経験を生かし、西日本豪雨で被災した岡山県の子どもたちへの支援活動を行っています。
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(豪雨の後の校庭(岡山県倉敷市真備町))
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西日本豪雨が発生したのは7月頭。いくつかの学校は浸水被害を受け、被災を免れた学校は避難所となりました。子どもたちは市外や親戚の家など様々な場所に避難し、そのまま前倒しで夏休みに入ることになりました。被災直後の混乱が続く中、児童・生徒たち一人ひとりの状況を学校側が把握することは非常に難しい状況でした。
そこで、私たちは、学校や行政、現地の地域コーディネーターの方々と連携し、被災した子ども一人ひとりを訪ね、困りごとなどを聞きました。そして、集まった声を元に、必要な支援を届けました。
その一つが避難先から学校までのスクールバスの運行です。
多くのご支援に後押しされ、夏休み明けの8月22日から、毎日バスを運行しています。みなし仮設住宅などへの避難生活のため、「片道2時間かかるようになってしまった」、「通学時間を考えて部活をあきらめないと…」と話していた生徒も、他の同級生と同じように、学校生活を送ることができています。
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(スクールバスで学校に通う子どもたち)
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一方で、まだまだ気が抜けない状況は続いています。
家を失くした生徒、自宅は大丈夫だったけれど親が職を失った生徒など、被災の程度が異なる生徒たちが学校の中に混在しています。すると、「私の方が被害が少ないし」「あの日のこと、話したら傷つく人もいるんじゃないか」と周囲を思いやって、自分の本心を隠してしまいがちです。
それぞれに、”話したいと思うタイミング”や”話せるタイミング”は異なりますが、子どもたちが”話したい”と思ったときに、いつでも耳を傾けられる相手がいることは大切です。
また、特に災害直後は、それまでの暮らしの中では見えなかった課題が顕著にあらわれます。
「親が大変そうだから、進学するのを諦めようと思う」
「避難暮らしが続いて、両親の口論が増えた。けれど、逃げる場所もない」
子どもたちからはこんな声が聞かれました。東北や熊本の時も、同じでした。家庭の経済力の違いや、家族や親戚との親密度の差が、災害によって顕在化し、その後の子どもたちの成長に大きく影響すると改めて感じています。
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(個別相談で一人ひとりの話に耳を傾けました)
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家庭環境によって、子どもたちの学びの機会に格差が生まれるのは、被災地だけの問題ではありません。 昨年は、子どもの虐待に世間の注目が集まった年でもありました。どんな環境に生まれ育つかを、子どもは選ぶことができません。
だからこそ私たちは、被災地の子どもたちの放課後学校『コラボ・スクール』、困難を抱える子どもたちの居場所『アダチベース』、不登校支援の拠点『おんせんキャンパス』、定時制高校も含めた高校生向けキャリア学習プログラム『カタリ場』など、あらゆる環境で苦難を抱える子どもたちに寄り添うため、それぞれに合わせた活動を展開しています。
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(高校生と本音で語り合う『カタリ場』)
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なんでもない、今日あったできごとを聞いてくれる人がいる。家族や友だちには話せない悩みを相談できる人がいる。知らない世界を教えてくれる人がいる。
「やってみようかな」「自分ならどうしたいかな」と思えるチャレンジがある。隣で同じように悩み、壁を乗り越えようとする仲間がいる。
「ここにいていいんだ」という安心感、多様な大人との触れ合いや小さな成功体験から生まれる自信や意欲を大切にし、子どもたちの自立する力を育むために日々取り組んでいます。
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(『コラボ・スクール』で勉強する子どもとスタッフ)
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カタリバは、設立からまもなく20年が経とうとしています。さまざまな環境で生きる10代と出会ってきた私たちが今、自信を持って言えることは「すべての子どもたちが変化できる可能性を持っている」ということです。
どんな環境に生まれ育っても、未来はつくれると信じられる「意欲」と、わくわくしながら知りたいことが広がり続ける「創造性」を手にできる社会を目指して。私たちと一緒に子どもたちを支えていただけたら嬉しく思います。
あらゆる環境にある子どもたちに学びの場を届け続けられるよう、あなたの力を貸してください。毎月1,000円で継続的に寄付してくださる「サポーター」を募集しています。「1日33円で子どもたちにチャンスを」。
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