「事業のスピード感を加速させる」採用のプロが28歳でカタリバに転職したわけ/NEWFACE
坂東 慶伍 Keigo Bando 経営管理本部 採用チーム
2014年3月に国際基督教大学を卒業後、旅行メディア企業に入社し、企画営業及びコンテンツ制作を担当。予算達成率1位、全社MVP受賞などセールスとしての実績を積む。その後、人材業界へと転身し、人材紹介(企業・求職者両面)、RPO(新卒・中途)等の業務を担当。2019年8月、国家資格キャリアコンサルタント取得。2020年3月よりカタリバで採用人事。
ここ10年で、仕事のあり方・捉え方は、まったく違ったものになってきている。終身雇用は崩壊、転職は当たり前のものとなり、副業やフリーランスも一般化。テクノロジーの発達によって無くなる仕事予想も大きな話題となった。給料や肩書よりもやりがいや意味を重視する若者も増え、都会から地方にUIターンすることも珍しくなくなった。世界が一斉に経験したコロナ禍をへて、今後ますます働き方は多様に変化していくだろう。
そんな中カタリバには、元教員・ビジネスセクターからの転職・元公務員・元デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持った人材が就職してきている。その多くは20代・30代。彼らはなぜ、人生の大きな決断で、いまNPOを、いまカタリバを選んだのか?
連載「New Face」では、入社1,2年の新入職員たちがカタリバで働くことを選んだ、その選択の背景を探る。
一般企業から「NPOの人事担当」というあまり耳馴染みのない転職を行い、日々試行錯誤を続けている坂東慶伍(ばんどう・けいご)。コロナ禍に入社し、採用を担当するようになってからまだ数ヶ月だが、「人材不足で事業のアクセルを踏めない」というボトルネックを解消してくれる存在として、社内の責任者たちから大きな信頼を寄せられ活躍している。
前職は、人材業界の採用コンサルタント。なぜ数多くの企業と求職者を結び付けてきた彼がNPOの人事というキャリアを志したのか。そして、なぜカタリバを舞台に選んだのか。彼が明かした「自分の本音と向き合っていたらカタリバに行き着いた」という言葉の真意に迫る。
カタリバの成長に
興味を持った
ーまず、大学を卒業して、カタリバに入職するまでの経歴を教えてください。
新卒で入社したのは、旅行メディアを運営する企業です。営業として入社し、2年とちょっと働きました。働くなかで感じたのは「人と向き合うこと」の難しさ。
当然ですが、こちらが良かれと思って提案したことであっても、必ずや受け入れてもらえるとは限らない。また、あるクライアントにはうまくいった提案方法も、他のクライアントにはうまく伝わらない。「自分はもっと人と向き合わなければならない」と強く感じるようになり、人材業界に興味を抱きました。
ーそして人材業界に転職されたんですね。前職ではどういった仕事を?
主に人材紹介業務と採用代行業務です。やり甲斐は、ものすごくありました。自分の仕事が求職者の人生そのものに影響するので、誠実に、考え抜いて向き合うことを心掛けてきました。もちろんプレッシャーもありましたけど、自分が介在する価値を感じられることが嬉しかったです。
するとだんだん、求職者にとっての「転職」というターニングポイントだけではなく、「転職・入社・活躍」といった人生そのものに伴走するような働き方をしたいと思うようになって。自分の想いを叶えられる仕事について考え抜いた結果、たどり着いたのが人事という職種でした。
ー人事の求人はたくさんあったと思いますが、なぜカタリバに?
もともとはもっと漠然としていて、なんとなく「企業の人事として働くんだろうなぁ」ぐらいで考えていました。特に軸もないので、SaaS系の会社や、業界的にも伸びているような会社を受けていました。
ただ、全然うまくいかなかったんですよね。理由を自分なりに考えてみたときに自分の心の底から「やりたい」といえる仕事ではないことが原因な気がして。もちろん採用という仕事自体はすごく意味があるし、やり甲斐はあるんですけど、自分の本音ではなかった。その頃たまたま見つけたのが、カタリバの求人でした。
ーなぜカタリバが転職先の候補に挙がったのでしょうか?
前提として、カタリバのことはもともと知っていました。大学で教育学を専攻していたので、教育に興味あるひととの関わりも多く、インターンしていた友人もいましたし。
だから、面接で話を聞いて、当時より事業領域が拡大していることにすごく驚いて。単純に事業が増えていることにもビックリしましたが、特にすごいと思ったのは組織をきちんと成長させていたことです。すごく収益を得ることが難しい領域で、経常収益ベースで4〜5倍へと成長していて。「なぜこんなことができるんだ」と一層興味が深まっていきました。
スピーディーに実行する
スタンスに惹かれた
ーカタリバへ入職する決め手は何だったんですか?
最終的な決め手は、ちょうど新型コロナウイルスが流行し始めたタイミングに、カタリバオンライン*をスタートしたことです。いま社会が必要としていることをカタリバの考え方に照らし合わせて、タイムリーかつスピーディーに実行に移せる。だから、ちゃんと支持されると気付きました。
*カタリバオンラインとは、コロナをきっかけにカタリバが始めた新しいサービス。web会議ツール zoomを使い、子どもたちはオンラインで世界中の人とつながって、新しい友だちをつくったり、新しい体験をしたり、その好奇心と可能性を大きく広げることができるオンラインサードプレイス。
そして最終面接の日。カタリバオンラインがスタートした初日だったんですが、代表の今村と面接する予定が「1時間、後ろ倒ししてほしい」と連絡があったんです。「カタリバオンラインの初日で人手が足りないから、代表も稼働する」と。
しかも、カタリバオンラインは、休業要請から4日ぐらいで「外国語対応します」や「無料でデバイスを貸し出します」というリリースを出していて、普通の企業だったらこのスピード感では動けませんよね。損得ではなく、「やるべきだからやる」というスタンスにすごく惹かれました。
ー現在は、どういった仕事を担当しているんですか?
採用人事です。一般的な職員の採用から、災害時に緊急支援にあたる現地スタッフの採用、生活困窮世帯の親子に伴走する「キッカケプログラム」のメンター採用まで、幅広く担当しています。
入職して驚いたのは、すごく多彩なバックグラウンドの方から応募いただいていること。一般企業でも「いろいろなバックグラウンドの社員が揃っています」と謳うことがありますが、ぼくの知る限り、その比ではありません。誰もが知っているような有名企業で実績を出してきたひと、公務員や学校の先生だったひと、青年海外協力隊に行っていたひとまで、多種多様な人生を歩んできた方との出会いがあります。話を聞くだけでもおもしろいです。
あと、NPOならではの魅力としては、ひととの関わり方がすごく緩やかなこと。一般企業なら応募してもらったら、採用か不採用かしかありませんよね。もう少し細分化したら、有期契約や業務委託という話も出てきますが、そのくらいです。
ところが、NPOだと、仮に採用につながらなくても「もしよかったら週に1回ボランティアしてみませんか」という話ができる。もちろん無理強いはできませんが、実際に希望してくれる方もすごく多いんです。お互いにいろいろな関わり方を検討できる点は、入職するまで気付きませんでした。
ーでは、大変なところを教えてください。
やり甲斐と表裏一体の部分でもあるんですが、ありがたいことにカタリバに関わりたいと思って応募してくれる方がすごく多いんです。それも「条件に当てはまったから応募した」というよりも「カタリバで働きたいから応募した」という方がほとんど。ただ、必ずしもカタリバで環境を用意できるわけではないので、お断りしなければいけないこともある。そういうときはとても心苦しいですね。
あとは、勤務地が地方の主要駅から車で1時間半かかるようなところの募集だと、採用の難易度も上がります。なかには現場で採用ニーズが生まれてから、数ヶ月もアサインできていないポジションもあるのが実情です。当然悔しいですし、さまざまな採用上の課題を乗り越えて、求職者に魅力を訴求していくことは難しいです。ただ、実際働いているひと、暮らしているひとがいる場所なので、何か圧倒的な魅力が必ずあるはずなんです。それを伝えられるように、もっと頭を使わなくてはいけない部分ですね。
カタリバのビジョンに自分の経験を掛け合わせたら、ぼくの役割が生まれた
ーカタリバで働くなかで見えてきたものはありますか?
チームで動くことの“強さ”です。2020年7月の台風で熊本に大きな水害被害が出たときに、カタリバが緊急支援をしたときの話です。コロナ禍なので東京から人員を向かわせることが難しい状況下で、現場では「子どもたちを預かって一緒に遊んだり勉強を教えたりする居場所を三ヶ所ほぼ同時に開設・運営する」ということが決まったんです。カタリバの災害支援経験としても、三ヶ所同時開設・運営は初めてのこと。それで、現地で業務委託として手伝ってくれるひとを4名採用することになったんですが、正直、ものすごく難易度は高かった。でもチームで意見を出し合って目標はクリアできた、あの経験は大きいですね。
ーでは、今後の目標について聞かせてください。
目先の目標は、採用できていないポジションにアサインしていくこと。そして「こういう人材がほしい」という現場のオーダーに対して、「そういう人材ならばこうすれば採用できる」という、採用手法の勝ちパターンを確立させていきたいと思っています。勝ちパターンを見つければ、採用ニーズに対してタイムリーにリアクションができるはずなので。いずれは、どの事業からオーダーをもらっても、事業のスピード感を緩めることなく採用できる体制をつくっていきたいと思います。
あと、副次的な役割として求職者の方たちにとって採用チームは“カタリバの顔”なんですよね。だから、もっとコミュニケーションの質を高めていきたい。「カタリバに応募して不採用だったけど、こういう話ができてよかった」、「カタリバの知らない一面に触れられて、ますます好きになった」といった印象が心に残るように、丁寧にコミュニケーションをしていきたいですね。
ーすごく地に足をつけて働けている印象を受けます。浮き足立っていないというか‥
カタリバという組織がすごくビジョナリーですからね。あえて奇抜なことをやるよりも、カタリバの勢いを加速させていきたい意識のほうが強いです。だから、目の前にある課題をひとつずつクリアしていきたいと思っています。
ー最後に、坂東さんが頑張れる理由について教えてください。
自分の役割があることは大きいですね。
ぼく、自分のなかに強烈に「これをやりたい」というものがないんですよ。漠然と教育には興味があったけど、学生時代は周りのひとほど強い“Will”を持っていないと感じながら過ごしてきたし、教育系の団体をつくったひとに話を聞いたときも「自分はそこまで頑張れないな」と思った。もちろんショックも受けました。
でも、少し遠回りはしたけれど、いまは間接的とはいえ教育領域に関われている。それはカタリバが、自分が前職、前々職を経て、経験してきたことやスキルに期待してくれる環境だからです。カタリバのビジョンと自分のできることを掛け合わせて、役割が生まれた。いまはそこを突き進んでいきたいと強く思っています。
ぼくは自分ひとりで何かできるとは思っていない。でも、本来仕事って自分ひとりでやるものではないですよね。自分より想いの強いひと、自分よりも何かしらの専門性があるひとがいて、自分も介在価値を発揮しながら、自分の想いも少しずつ叶えていきたいと思います。
仕事をしていると「自分は何をやりたいのか?」と問われるシーンは多い。確かにやりたいことがあれば、キャリアプランも立てやすい。転職するのであれば、尚更だ。
しかし、「やりたいことがないこと」は決して悪いことではない。自身が社会で培ってきた経験を発揮しながら、存在価値を見出していくことの積み重ねが、やり甲斐につながっていくこともあるはずだ。目の前の課題と向き合い続ける坂東のまなざしには、強い想いが宿っているように見えた。
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カタリバで働くことに関心のある方はぜひ採用ページをご覧ください
田中 嘉人 ライター
ライター/作家 1983年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学大学院修了後、2008年にエン・ジャパンへ入社。求人広告のコピーライター、Webメディア編集などを経て、2017年5月1日独立。キャリアハック、ジモコロ、SPOT、TVブロス、ケトルなどを担当しながら、ラジオドラマ脚本も執筆。
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