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「教育以外の分野から来たからこそできることが」営業、マーケ、PRを経験した彼女がカタリバを選んだわけ/NEWFACE

vol.334Interview

date

category #インタビュー #スタッフ

writer 田中 嘉人

Profile

萬代 奈保子 Nahoko Mandai room-K事業責任者

大手メーカーに総合職入社。提案型営業を経て本社マーケティング部署へ異動。戦略設計、新商品・リニューアル企画・開発、新規事業立ち上げなどの業務に従事。その後、PR会社にて企画立案、商業施設・水族館などのPR業務に携わる。事業立ち上げなどを経て2022年、カタリバに参画。room-Kの自治体連携統括・プロダクトマネジャーを経て、現在事業責任者を務めている。

ここ10年で、仕事のあり方・捉え方は、まったく違ったものになってきている。終身雇用は崩壊、転職は当たり前のものとなり、複業やフリーランスも一般化。テクノロジーの発達によって無くなる仕事予想も大きな話題となった。給料や肩書よりもやりがいや意味を重視する若者も増え、都会から地方にUIターンすることも珍しくなくなった。世界が一斉に経験したコロナ禍をへて、今後ますます働き方は多様に変化していくだろう。

そんな中カタリバには、元教員・ビジネスセクターからの転職・元公務員・元デザイナーなど、多様なバックグラウンドを持った人材が就職してきており、最近は複業としてカタリバを選ぶ人材もいる。その多くは20代・30代。彼らはなぜ、人生の大きな決断で、いまNPOを、いまカタリバを選んだのか?

連載「New Face」では、カタリバで働くことを選んだスタッフから、その選択の背景を探る。

「もともとは教育に興味・関心があったわけではないんです」

そう話すのは、カタリバオンライン不登校支援プログラム「room-K」事業責任者の萬代奈保子(まんだい・なほこ)。もともとメーカーの提案営業、マーケター、そしてPR会社などで活躍していた彼女は、なぜ社会問題に関心を抱き、カタリバを選んだのか。

彼女のターニングポイント、そして今の仕事にかける想いに迫る。


 

社会問題に関心を持つようになったきっかけ

——カタリバへ転職する以前、社会問題に関心を持つきっかけがあったと聞きました。詳しく教えてください。

新卒で入社した大手メーカーで働いていたときのことです。マーケティング担当としてスキンケアブランドの新商品企画・開発、新規事業の立ち上げなどを任されるなかで、社会情勢やトレンド、国や環境などによって変化が起こる購買行動や消費者心理に向き合うことが楽しく、自分の強い興味・関心の軸は「人」にあることに気付きました。

大好きな会社でやりたかったマーケティング・商品開発を行い、充実した日々を過ごしていたのですが、商品で溢れた世界でのものづくりに迷いも感じるようにもなってきて。

大量生産・大量消費に伴う負の側面についてもそうですが、一方で日々社内外問わず多くのステークホルダーと働くなかで、女性の健康や大人のメンタルヘルス課題、人としての平等など、身近な社会問題についても考える機会が増えていきました。消費される世界から人や社会にとってより意味のあるコト、社会課題や社会貢献といったことへ興味が移行していることに気付いて、外の世界に出ることを決意しました。

——その後、PR会社へ転職されています。どういう意図があったのでしょうか?

「まだビジネスセクターで学ぶべきことがある」と思ったからです。それはパブリックリレーションズ」つまり、社会を構成する“人(個人・集団) ”を巻き込むための仕組みづくりです。

今後、人や社会にアプローチしていくうえで、物事が話題化されたり、一人ひとりに情報を届けたりする、人や組織の行動変容を促すための仕組みを学ぶことは必要だと思いました。
そこで、共感するメッセージを掲げて取り組みを行なっているPR会社に転職しました。自分の適性や、将来やりたいことの解像度が上がっていったのもこの時期でした。

——やりたいこととは、具体的にどういったものだったのでしょう?

年齢・性別・障害の有無などを問わず、人として、より豊かな心で人生を生きる小さなきっかけを提供すること」です。また、社会を構成するすべての大人たちにも、必ず子ども時代があります。であれば、子ども時代の「環境」「出会い」「きっかけ」は誰にとっても大切なはず。
そんな考えから、子どもの「教育」に繋がる世界にも関心が向いて行きました。

「教育・NPO・自治体、社会を取り巻く知らない世界を知りたい」からの応募

——なぜカタリバを選んだのでしょうか? 元々知っていたとか?

いえ、最初はフェムテック事業など、社会問題と向き合いながら世の中の価値観変容を目指す会社を中心にチェックしていました。
その過程であるとき、NPOも社会に対してアプローチをしているけれど、私はその世界を全然知らないと気付いたんです。そこで「NPO」「教育」というキーワードでネット検索をおこない、カタリバを見つけました。

事業内容にも魅力を感じましたが、ビビっと直感が働いたのはカタリバの「すべての10代に意欲と創造性を」というビジョンです。
私は10代後半の頃、強い自己否定を抱えていました。でも、20代を経て今ではどんな新しいことでも必要と感じたら挑戦するし、何が起きても学びを得ることでポジティブに変換できています。自分のなかの価値観をひも解くと、カタリバのビジョンがピンポイントで共感できたんです。

——ビジネスセクターとは異なる世界へのチャレンジです。不安はありませんでしたか?

人並みに不安を感じました(笑)。でも、カタリバのビジョンへの強い共感と、「日本の教育現場の現実を知って社会が変化するための構造を学びたい。これまでの経験を活かして貢献したい」という思いもありました。

私でも応募可能なポジションはあるのか、どんな環境なのかを知るためにも、最初はオープンポジションで応募しました。すると、初めの面談でカタリバオンライン不登校支援プログラム「room-K」について紹介いただいたんです。

実は事前に募集を見てroom-Kの「レジリエンス領域」「自治体連携担当募集」に興味を感じていたので、チャレンジすることにしました。

——教育以外の分野からのチャレンジで、しかも教育の世界での経験があったわけではない萬代さんが採用された理由は何だと思いますか?

何だろう……?やはりカタリバのビジョンへの共感や、先ほどお話しした “自己否定の過去を乗り越えて自己受容を得た経験”みたいなところが、カタリバの本質的な部分と合致しているのかもしれません。

カタリバ自体も「現場での直接的な支援」だけではなく、「教育のシステムチェンジに寄与する」というフェーズに入ってきていて、ビジネスセクターでの事業開発のような経験が求められていたというか。双方のニーズとタイミングが合致したのかな、と思っています。

オンライン不登校支援プログラムをアップデートするために

——改めて、仕事内容について教えてください。

2024年4月からroom-Kの事業責任者になりました。

room-Kは私が入職した2022年に、自治体の公的な不登校支援の1つとして位置づけていただく自治体連携の実証を本格的にスタートしました。事業のフェーズを変える必要があるタイミングでの入職だったので、現場・各役割・事業全体の実態・課題理解に加え、自治体連携の仕組み開発、事業整備、事業開発をする必要がありました。

——具体的にはどのようなことが必要だったのでしょうか?

room-Kのメンバーの役割は、現場支援から運営、システム、安全管理まで多種多様であり、かつオンライン上で利用者にサービスを提供するには、相互に連携・連動することが必要です。
しかし、スピード重視で一斉に立ち上げたこともあり、教育委員会や学校経由の利用者受け入れをスタートした当初は大小問わずひずみが生まれていました。

私は自治体窓口として事業の責任を負っている意識だったので、事業内それぞれの役割・必要な繋がりを理解し、全体を俯瞰してネクストアクションを導き出さなければなりません。自治体に対しても細かい理解や丁寧な説明・対応が求められていたので、初期はとにかく必死でした。

——その問題をどのように解消していったのでしょうか?

とにかく事業内すべての役割や視点、利用者の実態理解、個々が感じている課題を汲み取ろうと、日々聞き取りを重ねました。同時に、問い合わせ対応や実務に取り組むなかで教育委員会・学校などに不登校支援の現状や課題・ニーズをヒアリングし、リアルな実態調査を兼ねました

そのなかで、room-Kに求められている役割、room-Kの軸となる個別伴走支援の重要性や事業内の課題、今後必要なアクション、目指すべき方向も見えてきました。

一方で、新しいフェーズで事業を推進していくには、事業内メンバーのベクトルを揃えることも大切でした。仕組みや安全面なども整備しながら、皆が「子どもたちや社会につながることで、同時にroom-Kの強みも生きる」と納得でき、自分の役割にも意味や価値を感じて働けること。そして、より良い連携・連動ができる形を模索しながら事業方針や事業に必要なことを提示しました。

そうして動いていくなかで、自治体連携・事業整備担当⇒プロダクトマネージャー⇒事業責任者になっていった形です。

コミュニケーションは“量”と”質”が大事

——各所とコミュニケーションをとっていくにあたって意識したことはありますか?

一人ひとりと丁寧に“対話”をすることですね。
いろいろな人と対話を重ねることで、それぞれの想いの理解や見えてくる景色があります。その景色が見えたうえで「こっちに向かうのはどうだろう?」という提案を織り交ぜるようなコミュニケーションを心がけました。

すぐにすべてが順調にいったわけではありませんが、皆の経験や視点を学び、紡いでいくというスタンスだったからこそ、少しずつ同じ方向を向いて課題を共有し、業務に取り組めていった気がします。

大変ではありましたが、助けてもらうことや気づきも多く、何よりどんどんベクトルが揃っていく感覚がうれしかったです。

——自治体との連携も初めてだったと思いますが、戸惑うことはありませんでしたか?

正直、たくさんありました。でも、いろいろな考え方ややり方があるのは、どの世界にいても同じです。共通目的や課題をすり合わせることや、自分の考えは持ちつつも相手の立場への理解を意識することで、足りない観点を学び、どんどん事業開発につなげていきました。

「これが必要だと思うのですがどう思いますか?」と相談すると、「じゃあこうしてみたらどうだろう?」と、一緒に模索してくれたり、新しいアイデアや解決策が生まれることもたくさんありましたね。

——コミュニケーションの“量”を大事にすることで前職の経験やノウハウが活きてきているわけですね。

そうですね。営業時代の「ステークホルダーの立場を理解しwinwinの関係を築いていく」経験、マーケター時代の「方向性を示しつつ、異なる役割の人から知見を学び、前進していく経験」に、カタリバに入ってから学んだ知見が肉付けされてきているイメージです。

カタリバへ入職したからこそ出会えた、さまざまな経験をもつメンバーや自治体の皆さまからも、日々新たな視点をインストールさせてもらっています。すべてのことにおいて線引きせずに、これからもいろいろなことと向き合っていきたいです。


 

「自分ひとりでやっている感覚は全くなく、本当にすべての役割の人と一緒に、同じ目的に向かって進んでいるイメージなんです」

事業責任者としての働き方について、彼女はこう振り返った。役職に就くとつい「自分が決めなければ」とプレッシャーを感じてしまうケースも少なくないが、彼女はコミュニケーションを重ねるなかで方向性を示している。まさにこれからの時代に必要なリーダーシップのあり方だ。
これまでの経験を活かしつつ、役割を果たす彼女のこれからに期待せずにはいられない。

 

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Writer

田中 嘉人 ライター

ライター/作家 1983年生まれ。静岡県出身。静岡文化芸術大学大学院修了後、2008年にエン・ジャパンへ入社。求人広告のコピーライター、Webメディア編集などを経て、2017年5月1日独立。キャリアハック、ジモコロ、SPOT、TVブロス、ケトルなどを担当しながら、ラジオドラマ脚本も執筆。

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