自分の「未来」をつくるための実験の場
双葉みらいラボ
Concept
震災と原発事故という、誰も経験したことのない災害に見舞われた福島の子どもたち。その経験を前向きな力に変え、未来をいきいきと生き抜く子どもたちを育むべく、ナナメの関係を日常的に届けることができる「学校の中にある新しい放課後の居場所」を届けたい。そんなコンセプトでうまれた「双葉みらいラボ」は、学校の中と放課後が繋がることで、心の安定とチャレンジの機会を日常的に支え、子どもたちが自ら未来を切り拓く力を育める環境づくりに寄与しています。
活動概要
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クライアント
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所在地
〒979-0408 福島県双葉郡広野町中央台1丁目 6番地3
福島県立ふたば未来学園高等学校併設 -
TEL
0240-25-8424(平日11時30分-20時30分)
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活動期間
2017年6月〜
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対象
福島県立ふたば未来学園高等学校に通う高校生
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活動内容
居場所運営/学習支援/体験プログラム/学校連携/地域連携
放課後探究活動支援/マイプロジェクト
活動の背景
福島の高校生に安心して学べる場所を
2011年の福島第一原発事故により、福島県沿岸部は今もなお大きな課題を抱えています。その影響は子どもたちにも。避難や転校によって従来のコミュニティは失われ、故郷にいつ戻れるのかわからない子どももいます。日常の喪失という厳しい現実を突きつけられた子どもたちのために、安心して学び、未来を考えられるような居場所を作りたい。そんな想いから、福島県双葉郡で2015年に開校した、県立ふたば未来学園高校に高校支援コーディネーターを配置することから活動を始めました。
学習支援と探究学習サポートの必要性
ふたば未来学園は、双葉郡8町村に存在していた学校が震災の影響で分散したことを受け、双葉郡の教育環境再整備の核として誕生した学校です。専攻は3つに分かれ、就職先・進学先も多岐にわたることから、在籍する生徒層も様々。また、度重なる避難生活によって学習に遅れが出てしまっている生徒もいました。
さらにふたば未来学園では「探究的な学習」をカリキュラムの軸に置いています。1年次は地域に飛び出したフィールドワーク、そこで見つめた地域課題をふまえて2・3年次では全員がテーマごとに分かれて地域課題解決の探究と実践に取り組みます。生徒の学びを加速させる、探究学習のサポートも求められていました。
学内ユースセンター「双葉みらいラボ」の誕生
プレハブ校舎時代の双葉みらいラボ
学校と高校支援コーディネーターが協議を重ねる中で、ナナメの関係が日常的にあふれた高校併設型の放課後フリースペース構想が生まれました。学習に遅れがある子も、もっとプロジェクトを前に進めたい子も。放課後その場所に行けばいつでも質問や相談ができる少し年上の先輩たちがいる。そんな放課後の居場所が学校の中にあることで、生徒の学びを深めながら心のケアに日常的に取り組めると、まずは空き教室を使った放課後の居場所づくりを始めました。2017年9月には専用のプレハブ校舎を建設。2019年4月からは、新校舎の中に「双葉みらいラボ」のスペースがつくられました。
2019年4月より移転した新校舎1階のデッサン
活動内容
●地域にも開かれた、学びが豊かになる空間づくり
地域とも協同学習を行う多目的スペースには、生徒たちが経営するカフェや、大型スクリーンで多様な活動を行える多目的教室もあり、中高生が放課後の探究学習や自主学習の場として利用している。
●地域課題解決型プロジェクト学習のサポート
「原子力災害からの復興」をテーマに掲げ、地域の課題に逃げずに向き合うという、ふたば未来学園高校独自の地域課題解決学習の授業サポートを学校内で行いながら、双葉みらいラボでの放課後サポートも行っています。プロジェクトの大小は様々ですが、常に40、50プロジェクトが学校内で動いており、これらのプロジェクトの継続的な相談に乗ったり、生徒と地域の大人を繋いだりして、授業と放課後の連携を実現しています。
●ナナメの関係と対話を軸にした安心安全な居場所づくり
「ナナメの関係」であるスタッフとの日々の対話の中で、日々の悩みや進路のこと、震災の経験などを安心して相談できる環境の整備を行っています。学習棟とは別に設けられた多目的棟では、ゆったりと寝転べるスペースもあり、オープンな雰囲気で話ができます。またイベント等も開催する中で意欲的に学びに取り組む学生や社会人との出会いをつくり、学びの主体性を育むことを目指しています。
●個々の状況に応じた放課後の学習サポート
放課後学習室を設置し、個々の生徒に応じた学習サポートを行っています。学習室には毎日20名ほどの高校生が足を運んでおり、考査期間には50名以上が利用することもあります。福島大学と連携した考査期間中の放課後学習会では、高校の寮生約130名への学習支援も実施。高校と連携し、成績不振の生徒への特別ゼミも開催しています。できないことができるようになる経験を積み、自己肯定感の強化を目指します。
活動の成果
学内ユースセンターを設置することで生徒にポジティブな変化が起こる
双葉みらいラボ開設から1年で利用者はのべ1万人以上。先生方からの送り出しもあって、在籍生徒の80%以上が1度は利用したことのある居場所になりました。
利用生徒へのアンケートを行ったところ、双葉みらいラボを利用した生徒たちに自己肯定感や進路、学校生活に関する意欲の高まりなど、ポジティブな変化が見られました。また生徒たちにとって双葉みらいラボは安心安全で挑戦を応援してくれる場として認識されていること、学習意欲が高まることなどが明らかになりました。
双葉みらいラボを利用する生徒へのアンケート
双葉みらいラボを利用することで起きた変化はありますか。(自由記述の一部抜粋)
・少し自分を認め、前向きに考えることができるようになった。
・人と関わる機会が多くて、成長できた。人見知りが少しなおって話せるようになれた。
・笑顔で話すことができるようになった。
・新たな友人と出会えた。自分を知れた。・周りが自分の何倍も勉強していることに気づけた。
・周りも勉強を頑張っている人がいて、自分も頑張ろうと思った。・人の意見を聞くだけではなく、
自分から調べて積極的に物事を進めようと思った。
・考えたことを行動する勇気が持てました。カタリバの方々の支えがあると考えられるようになり、
自分の意見を持てました。
・自分の目標を明確にすることができた。
双葉みらいラボに満足している理由はなんですか。(自由記述の一部抜粋)
・スタッフの方が優しく、学校の先生がしてくれない話をしてくれて刺激になるから。
・話しかけてくれて不安や悩みを自然に言わせてくれるから。
・時間があるときにここにくれば、勉強しようと思えるし、自由だから。
・「勉強をしよう!」という気持ちになる。将来のことを親身に考えてくれる。
・他の学校では経験できないようなことがたくさんあるから。
・自分から参加できない活動に誘ってくれたり、勉強を教えてくれたりするから。
連携
学校との連携
学内に設置された双葉みらいラボには日常的に学校の先生方が足を運んでおり、生徒の様子を相互に見守りながら連携を深めています。時にはラボ内で打ち合わせを行ったり、先生方が主催するイベントも開かれたりする場合もあります。生徒情報の共有や生徒の送り出しなどにもご協力をいただいています。高校支援コーディネーターを担当するスタッフとの連携も欠かせません。
地域との連携
探究学習に取り組む高校生たちと地域の人をつなぐ「ハブ」としても機能しています。双葉みらいラボのスタッフは日常的に地域の団体活動に足を運び、プロジェクトに取り組む高校生の協力者となる地域の団体や個人の方と高校生をつなげる役割を担っています。
大学との連携
主に考査期間における福島大学の学生による学習支援のコーディネート業務を担っています。学習支援に向けた事前研修や振り返りの機会を設け、大学生が安心して高校生の学習支援を行えるような環境づくりを行っています。
※「コラボスクール」・「collabo school」は 認定NPO法人カタリバの登録商標です(登録5758301)・(登録5758303)